人材紹介の契約書に使える雛形まとめとリーガルチェックポイント
人材紹介業を運営する上で、不可欠な書類が求人企業と交わす「基本契約書」。
人材紹介会社と求人企業は、基本契約書を締結することで、採用決定時の成果報酬の料率や支払タイミング、早期退職時の返金規定などを決定します。
成果報酬の料率や支払いタイミングについては、こちらの記事でも解説しています。
今回は基本契約書について、詳しく解説します。
人材紹介事業に必要な書類一覧
人材紹介事業の運営には、主に以下のような書類が必要となります。事業運営上、必要となる書類はあらかじめ準備しておきましょう。
- 基本契約書
- 求人票
- 内定通知書
各書類の内容は各社大きな差はないことが多く、必須項目や不可欠な項目以外は、必要に応じて企業ごとにカスタマイズが可能です。
各書類については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
人材紹介の契約書の雛形フォーマット
人材紹介の契約書の雛形フォーマットは、各種人材紹介会社や関連事業者のウェブサイトに様々なものが公開されています。
各雛形フォーマットへのリンクをまとめました。前述の通り、契約書の文言は各社大きな違いはなく、必須項目や必要不可欠な内容以外はカスタマイズができます。
ぜひ参考にしてください。
会社名 | リンク |
ポーターズ株式会社 | 人材紹介契約書テンプレート |
株式会社ブレイン・ラボ | ボ人材紹介基本契約書の雛形フォーマットを無料公開いたします |
人材紹介の契約書の主な重要ポイント
人材紹介の契約書では、主に報酬の料率や秘密保持義務、個人情報の管理やトラブル発生時の損害賠償や違約金について取り決めを行います。
特に2018年1月の職業安定法の改正により、「返金規定(採用フィーの返還規定)の有無とその規定内容」の明示が新たに必要となりました。
人材紹介会社は年1度の労働局への報告に加え、厚生労働省が運営する「人材サービス総合サイト」から各項目について報告する義務があります。
2018年の職業安定法の改正については、こちらの記事で詳しく解説しています。
各項目について、契約書に必要な事項が盛り込まれているか、契約前に必ずチェックしておきましょう。
雛形フォーマット使用時の注意点
インターネット上に公開されている契約書のフォーマットを使用する際は、使用前に自社の顧問弁護士と「該当の契約書フォーマットを使用して、問題はないか」を相談するようにしましょう。
事業の法的リスクは、可能な限り未然に防ぐことがおすすめです。
特に中長期的に「株式上場を目指す」などの目標がある場合、事業の法的観点の危険性は、上場リスクに直結します。ダウンロードした書類を精読せず「そのまま使う」ことは避けてください。
人材紹介の契約書のリーガルチェックポイント
続けて、人材紹介の契約書について法的観点から特に注意すべきポイントを解説します。
紹介手数料の金額は具体的に定められているか
採用決定時に発生する紹介手数料の金額が、具体的に定められているか確認しましょう。
人材紹介業の手数料相場は、求職者(個人)の理論年収の30%〜35%程度です。
人材紹介業の手数料は「届出手数料制」を採用しており、料率は50%を上限に設定可能です。
ただし、一般的な相場である30%〜35%を著しく超える手数料を設定する場合は「届出時に合理的な説明が必要」。
求人企業との契約時にも、モラルとしてやはり合理的な説明が必要でしょう。紹介手数料の料率や金額について、双方互いに納得した状態で契約を結びましょう。
紹介手数料の発生タイミングはいつか
一般的には、紹介手数料の発生タイミングは「採用決定時」。支払タイミングは「入社日」を起点に翌月末までとするのが一般的です。
ただしクライアント企業の中には、締め日の関係で「毎月20日締めの、翌々月末払い」を希望する会社もあるでしょう。
クライアント企業の希望に合わせて柔軟に支払タイミングも変更するのか、それとも一律で翌月末とするのかは事前にすり合わせておきましょう。
紹介された人材と直接接触し、契約した場合の罰則規定
人材紹介業の手数料相場は、採用された人材の理論年収の30%〜35%。
理論年収300万円の人材の採用が決定した場合、紹介手数料はおよそ100万円。年収900万円の人材の場合、紹介手数料は300万円近くとなります。
つまり、求人企業にとって人材紹介会社に支払う手数料は決して安いものではありません。中には手数料の支払いを拒み、紹介された人材と直接接触し、契約を交わそうとする悪質な企業も出てくるでしょう。
こうした行為に対する罰則規定も、契約書に盛り込んでおきましょう。人材紹介会社を交わさず、直接契約した場合にも手数料相当の罰金が発生すると定めるケースが多いです。
早期退職時の返金規定
紹介した人材が入社後に早期退職した場合、紹介手数料の一部を返金する規定を定めることが多いです。
返金規定の対象となる期間は、入社後1ヶ月〜3ヶ月以内、もしくは6ヶ月以内程度が主流。返金額の料率は事業者や案件によって様々ですが、一例としては以下の通り。
・入社後1ヶ月(30日)未満……手数料の80~100%の返金
・入社後1ヶ月(30日)〜3ヶ月(90日)以内……手数料の50%程度の返金
在籍期間が長いほど低くなるように設定されます。
また早期退職時には「返金」ではなく「フリーリプレイスメント」によって保証を行うケースもあります。フリーリプレイスメントとは、人材の早期退職時に無償で新たな候補者を紹介するもの。
求人企業は早期退職の保証として返金を求めるケースが多いですが、人材の穴埋めを希望するケースもあるため事前に契約書で対応策を定めておくことをお勧めします。
求職者のオーナーシップ
求職者のオーナーシップとは、人材紹介会社が求職者を求人企業に紹介した場合、一定の期間にわたって「その求職者のオーナーシップ(所有権)」を保有することを明記するものです。
ある企業に人材紹介会社が人材を紹介したものの、その時点では採用決定には至らなかったとします。この場合、紹介した人材が別のルートで再度同じ企業の求人に応募し、採用に至るケースがあり得ます。
上の状況でも権利の保有期間内であれば、契約書で定めた料率の紹介手数料が発生するのが「オーナーシップ」です。
オーナーシップの有効期間は、人材を紹介してから12ヶ月程度とするのが一般的です。
契約書の締結方法
近年では、業務効率化を目的に電子署名による契約手続きを行う企業も増えてきました。
とはいえ、多くの契約書では慣例的に署名捺印や「紙の契約書の保管方法」については記載してあっても、電子署名に関する取り扱いを定めていないことが多いです。
契約手続きを電子署名によって行う場合には、以下のような文言を契約書に盛り込むことを推奨します。
「本契約の成立を証するため、本書の電磁的記録を作成し、○○○および●●●が合意の後電子署名を施し、各自その電磁的記録を保管する。」
(参照元:クラウドサイン )
まとめ
人材紹介業の契約書につかえる雛形のテンプレートのリンクや、契約書の内容の重要なポイント。また契約書を確認する際のリーガルチェックポイントを解説しました。
契約書の文言にきちんと目を通し、契約内容を明確にすることで多くの法的リスクを未然に低下させることができます。ぜひ人材紹介業を運営する上で、紹介したリーガルチェックポイントを参考にしてください。
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