

2020年9月1日、厚生労働省が令和2年7月分有効求人倍率を発表。
正社員有効求人倍率(季節調整値)は0.81倍と、前月比-0.03ポイント低下。4ヶ月連続のマイナスとなり、新型コロナウイルス感染拡大の影響が有効求人倍率にも色濃く現れた形です。
今回は最新版の有効求人倍率のデータをもとに、市場動向や、有効求人倍率の低下が人材紹介に与える影響を読み解いていきます。
厚生労働省の発表によると、令和2年7月分の正社員有効求人倍率は0.81倍でした。
なお、有効求人倍率は1.08倍。新規求人倍率は1.72倍となりました。
正社員有効求人倍率・有効求人倍率・新規求人倍率の定義は、それぞれ下記の通りです。
いずれも集計元はハローワークであり、ハローワークで求職する人数に対し、どれだけの求人があるかを示す数値となります。
「正社員有効求人倍率0.81倍」という数値は、高い数値なのでしょうか、それとも低い数値なのでしょうか。
数値を前月以前のものと比較し、並べてみると最新の数値が持つ意味が見えてきます。
新型コロナウイルスの感染拡大や緊急事態宣言の発令を境に、2020年1月には1.07倍を記録していた倍率が右肩下がりで下降し続けていることが分かります。
内閣府の発表によると、2020年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は年率換算で実質27.8%減。リーマンショック時の年率17.8%減を超える戦後最大の落ち込みとなっています。
エコノミストの間では4~6月期を境に経済が回復に向かうという見方もあります。ただし感染拡大が続けば経済回復が長引くことに加え、景気の回復が直ちに企業の採用意欲の活性化に繋がるかは見通しが不透明です。
景気回復の兆候が見え始め、なおかつ新型コロナウイルスのワクチン開発の進捗が明らかになるまであと数ヶ月は、有効求人倍率は横ばい、もしくは下降が続く可能性が高いでしょう。
求人倍率の低下を業種・産業別に見ると、宿泊業・飲食サービス業が共に44.0%減を記録し、ワーストの落ち幅です。
主な業種別の、新規求人数の低下率は以下の通りです。
宿泊業・飲食サービス、娯楽業、小売業など、ステイホーム期間中の外出自粛の影響を強く受けた業種の求人倍率の低下が目立ちます。
また製造業など、輸出入と関連し、海外のロックダウンの影響を受けた業種の減少も目立ちます。
有効求人倍率は1を上回れば売り手市場、下回れば買い手市場です。
2017年4月には、バブル期のピークであった1990年7月の1.46倍を上回る有効求人倍率を記録。以来日本の転職市場は「売り手市場」と呼ばれてきました。転職者にとって企業選びの幅が広く、有利な状況が長く続いてきたことを意味します。
しかし、最新の統計で有効求人倍率は1.08倍。新規求人倍率は1.72倍。正社員有効求人倍率に絞ると1を下回ったことから、採用サイドが有利に。
競争率が高くなり、転職難易度が大きく上がっています。
ここからは有効求人倍率の低下が人材紹介に与える影響を見ていきます。
有効求人倍率が低下するということは、求職者の数に対して、求人数が減っているということです。
つまり人材紹介会社にとっては、求職者に紹介できる求人案件の数自体が少ない状況です。
求職者にとっては少ない求人の中から案件を選ぶため「思うような仕事がなかった」という状況になりやすく、求人案件と求職者のマッチング率も低下します。
案件が少ない中でも、マッチングが成立するような仕掛けが人材紹介会社には求められます。求職者のキャリアカウンセリングや、面談の重要性が増していると言えるかもしれません。
求人案件の中には、景気変動の影響を強く受けるものもあります。未経験者歓迎の求人や、ポテンシャル採用の案件はその1つです。
未経験者やポテンシャル採用枠の社員は、企業にとっては即戦力にはならず、採用コストだけでなく育成コストがかさむ存在です。
そのため経営状態が安定している時には募集を行うものの、景気が悪化してくると求人を取りやめる企業が増加します。
中には入社前のポテンシャル採用枠の人材に対して、採用計画の見直しに伴う合格取り消しを通達する企業も出てきます。
人材紹介会社にとっては、求人倍率の低下の時期は「自社が抱える求人案件が内包しているリスク」と向き合うタイミングです。
未経験者やポテンシャル採用枠の人材へのニーズが大きく下がる一方で、即戦力クラスの人材は難なく採用が決まることもあります。
景気が悪化する時期は、企業は「本当に欲しい人材」だけを厳しく選別し、採用する傾向が高まります。
たとえば多くの企業で、慢性的な人材不足に陥っている職種の1つがエンジニアです。
即戦力にならない人材への投資を控える一方で、人手不足の職種に対しては堅実に人員を確保し、中長期的な競争力を身につけていきたいと考える企業は常に一定数あります。
よってどこでも通用するポータブルスキルや、高い専門性をもつ人材へのニーズが減少することはあまりないでしょう。
「新規事業の立ち上げ時期のみ、該当分野で実績のある即戦力人材に業務に協力して欲しい」といった、即戦力人材を変動費に計上したいというニーズが景気悪化時には高まります。
即戦力人材を正社員雇用する場合、固定費がかさみます。
一方で即戦力人材にフリーランスとして業務を発注すると、予算を変動費に計上できるため、固定費を圧迫せず必要に応じた予算の増額・減額がより容易になります。
正社員求人倍率が落ち、転職難易度が高まる中だからこそ、スキルがあるフリーランサーにとっては案件を探しやすいタイミングとも言えるかもしれません。
最後に有効求人倍率が減少する中で、人材紹介会社が取り組むべきことを紹介します。
まずは売り手市場を見極めることが大切です。
有効求人倍率が低下する中でも、落ち幅が小さい業種や採用意欲が依然として高い業界も存在します。
「どの業界・どの業種であれば高いマッチング率が見込めるか」を見極め、求人案件を獲得していくことが大切です。
前述の通り、景気悪化時には未経験者・ポテンシャル採用枠の求人は大きく落ち込みます。
「どんな人でも、やる気があるなら採用する」という企業は減り、市場価値の高い人材に絞って厳選して採用したいというニーズが高まります。
よって人材紹介会社は、どこでも通用するようなポータブルスキルを持つ転職志望者・フリーランスを集め、企業に提案できるような体制づくりが大切です。
人材紹介会社にとって、求人倍率の低下は求職者に紹介できる求人数そのものが減ることを意味します。
そうした時に使うべきサービスが、求人データベースです。
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