

国内の労働人口の減少を背景に「外国人労働者」の採用ニーズが拡大しています。
厚生労働省の外国人雇用状況届出(令和元年10月末現在)によると、日本における外国人労働者数は約165万人。(※1)
このうち「資格外活動許可」と呼ばれる留学生などのアルバイトを除くと、およそ128万人の外国人が日本で働いている計算となります。
外国人労働者の中でも、近年、特に注目度が高まっているのは「高度外国人材」です。
今回は外国人労働者の採用ニーズの拡大や、高度外国人材への注目の高まりを背景に、外国人人材紹介について1つ1つ解説いたします。
外国人・海外人材の人材紹介サービスとは「外国人を採用したい求人者(企業)」と「日本で働きたい外国人求職者(個人)」を仲介し、両者の最適なマッチングを実現するサービスのことです。
一般的な人材紹介業とビジネスモデルは共通しています。
外国人人材紹介サービスでは、人材紹介会社は求人者(企業)から成果報酬型で手数料を受け取ります。
人材紹介会社のビジネスモデルについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
従来、日本における海外人材紹介としてもっとも主流なのは「技能実習生」です。
技能実習生とは「日本で技能を習得した外国人が母国に戻り、習得した技能を自国の産業の発展に活かすこと」を目的とした制度であり、一社当たりの採用人数と滞在期間(最長五年)の定めがあります。
よって、受け入れ先の企業にとって技能実習生は「日本人と同等の条件」での採用が難しいことも事実。
また技能実習生には、学歴要件や業務の実務経験などが問われないため「低賃金」「長時間労働」などの問題が発生しやすいことも難点です。
そこで近年、注目されているのが「高度外国人材」。
高度外国人材とは、主に「専門的・技術的分野の在留資格」を持つ外国人を指します。
「専門的・技術的分野の在留資格」とは、具体的に以下の分野での在留資格のことです。
在留資格 | 日本国内での活動例 |
教授 | 大学の研究・教育者 |
芸術 | アーティストなど |
宗教 | 宣教師 |
報道 | 報道機関の記者・カメラマン |
高度専門職 | 高度人材ポイント制度に基づくもの |
経営・管理 | 経営者・管理者 |
法律・会計業務 | 弁護士・公認会計士 |
医療 | 医師・歯科医師・看護師 |
研究 | 公的機関や企業の研究者 |
教育 | 中学・高校の語学教師など |
技術・人文知識・国際業務 | 機械工学などの技術者、通訳、デザイナー、マーケティング業務従事者など |
企業内転勤 | 外資系企業社員 |
介護 | 介護福祉士 |
興行 | 俳優・歌手・スポーツ選手など |
技能 | 調理師など |
特定技能1号・2号 | 特定産業分野に関する知識・経験・技能を要する業務 |
経営・管理や教育、研究、機械工学など高度な専門分野が定められています。
これらの分野に従事する外国人労働者は多くの場合、大学もしくは大学院卒。
そして理工学や法律・経済・金融などの専門的知識を持ち合わせており、英語が堪能で、日本語の学習意欲も高いケースが多いです。
高度外国人材を採用することで、日本企業にとっては基本的に以下のようなメリットがあります。
外国人人材紹介サービスは、日本国内で働きたい外国人求職者(個人)と求職者(企業)のマッチングサービス。
日本国内に在住している外国人のマッチングだけでなく、ベトナムやモンゴルといった外国の日本語学校などと提携し、日本での就職を斡旋するケースもあります。
以下のようなニーズを持つ求職者の方に、おすすめのサービスです。
日本企業が高度外国人材を活用する基本的なメリットは前述した通りです。
採用担当者にとっての外国人人材紹介のメリット・デメリットや、人材紹介会社にとっての新規参入する市場としてのメリット・デメリットについても詳しく見ていきます。
採用担当者向けのメリットには、以下の項目が挙げられます。
・マッチング成立時までサービスの費用が発生しない
・即戦力の外国人人材の採用が可能
・ビザ取得や入国などに関する業務の代行も可能
・採用担当者の負担の軽減
・自社の海外進出時の人材採用にもサービスを活用可能
外国人人材の採用は、多くの日本企業にとって採用のノウハウが確立されておらず、採用担当者にとって大きな負担となる業務です。
外国人人材紹介に特化したサービスを活用することで、採用担当者の業務の負担を軽減しつつ品質の高い人材を採用可能です。
デメリットには以下の項目が挙げられます。
・日本人の人材よりも低コストで雇用が可能とは限らない
・全ての海外人材紹介サービスがビザ取得を代行しているとは限らない
近年はアジア各国の人材の給与水準が上昇傾向にあります。
日本語の語学力を持ち、なおかつ大卒・大学院卒相当の学力や専門性を持つ人材の場合、給与水準は日本人人材を下回るとは限りません。コスト優位性だけではなく「外国人人材だからこそ、日本人よりも優先して雇用したい理由」を採用担当者が認識しておく必要があるでしょう。
またビザ取得のサポート状況は、人材紹介会社によって様々です。自社でビザ取得を担当する必要があるケースもあります。
人材紹介会社向けのメリットは、以下の項目が挙げられます。
・労働人口が拡大傾向にある市場の有料職業紹介に参入可能
中長期的な展望に立つと、国内市場を対象に人材紹介業を展開している企業は「人口ピラミッドの変化」が課題となります。
みずほ総合研究所の調査では、2016年の労働人口は6648万人。2030年には5880万人、2050年には4640万人へと縮小していくことが予測されています。
労働人口の縮小は、企業に紹介できる人材の母数そのものが減少していくことを意味しています。
一方で、海外の国々では労働人口が拡大傾向にあるケースも多いです。
海外市場に早期から参入することで、今後10年~20年のスパンで多くの日本企業が直面する「労働人口の減少」や「社員の高齢化」という課題に対して「海外人材紹介」という解決策を提案できるようになるでしょう。
人材紹介会社向けのデメリットには、以下の項目が挙げられます。
・早期退職率が高止まりする可能性がある
日本語の語学力が高い海外人材が「日本企業の文化にもすぐに馴染める」とは限りません。求職者(個人)にとっては海外企業への就職となるため、文化や周囲との人間関係に馴染めなかったり、ホームシックになってしまう可能性もあるでしょう。
日本人の人材紹介と比較して、早期退職率がやや高止まりしやすい可能性は否めません。
国内人材の紹介と比較して、紹介手数料を引き下げつつ返金規定を厳しめに整備するなど料金設定や規約の工夫が必要となるでしょう。
代表的な海外人材の人材紹介会社を3つ、紹介します。
Bridgersは、主に日本語レベルがN1~N2レベルの海外人材を紹介する海外人材紹介サービス。
日本での留学経験やワーキングホリデーの経験を持つ人材の紹介を多く手がけています。主な紹介対象の職種は接客・販売職・営業職。
この他に、エンジニアを中心とする技術職の海外人材紹介も行っています。
JELLYFISHは、外国人エンジニアのマッチングを手がける人材紹介会社。
世界48ヶ国以上の外国人ITエンジニアを紹介。外国人登録者の75%は日本在住、91%が35歳以下であり、日本語レベルが全体的に高く、日本文化に対する学習意欲も高い傾向にあることが特徴です。
外国人求人ネット ACEは、外国人キャリアと留学生の転職・就職を支援する人材紹介会社。
137ヵ国・6万人超の登録者数と16年以上に渡る紹介実績が強みで、海外営業・購買・会計・経理・マーケティング・生産管理から開発職まで幅広い案件に対応しています。
最後に海外人材紹介サービスの立ち上げ方や、各種手続きについて解説します。
「一般的な人材紹介会社の立ち上げ」と共通する部分も多いですが、外国人人材紹介に特化した手続きもいくつか必要です。
1つ1つ見ていきましょう。
一般的な人材紹介会社の立ち上げ方は、こちらの記事で詳しくまとめています。
「そもそも人材紹介会社は儲かるのか」「どのようなビジネスモデルなのか」といった市場環境や収益構造に関する解説から、「資本金準備」「オフィス準備」まで1つ1つ解説しているため、まずはこちらの記事に目を通してください。
ここからは、海外人材の紹介に特化した手続きとなります。
まず国外に居住する求職者を、日本国内の企業に紹介するためには「国外にわたる職業紹介」の手続きが必要となります。
「国外にわたる職業紹介」の定義は以下の通りです。一言で言うと「個人」「企業」のいずれかが国外に所在している場合は、必ず手続きが必要です。
・国外に所在する求人者と国内に所在する求職者との間における雇用関係のあっせんを行うこと
・国外に所在する求職者と国内に所在する求人者との間における雇用関係のあっせんを行うこと
「国外にわたる職業紹介」の申し込み書類には、以下が必要です。
【提出書類】
1.職業紹介事業取扱職種範囲等届出書(様式第6号)
2.取次機関に関する申告書(通達様式第10号)
【添付書類】
1.相手先国の有料職業関係法令およびその日本語訳
2.相手先国で当該取次機関の活動が認められていることを証明する書類(許可証等) と、その日本語訳
3.取次機関と事業者の業務分担について記載した「契約書」「その他事業運営に関する書類」およびその日本語訳
「国外にわたる職業紹介」の手続きが済んだら、外国人の入国から就業までの流れに沿って事業を進めていくこととなります。
就労ビザ保有者や日本人の配偶者など、既にビザを保有している人材はビザに関する手続きを大幅に軽減することができます。
大まかな流れは以下の通りです。
1.外国人材を日本国内の企業に紹介
2.就労ビザの取得可能性の調査と確認
3.雇用契約
4.就労ビザ申請
5.外国人人材が母国で査証を申請し、取得
6.来日・入社
海外人材の募集方法は、自社ウェブサイトでの求人からLinkedInなどSNSを活用するものまで様々です。
日本の大学などで学んでいる留学生を採用したい場合は、教育機関に求人を出すことも一般的です。
また近年、増加しているのがインドやインドネシア、ベトナム、モンゴルなどアジアの新興国の教育機関と連携した求人です。
早くから現地の教育機関で高度な日本語教育を施した人材を、日本国内の企業とマッチングさせるパターンが増えています。
永住権の所有者など一部の外国人を除き、多くの場合、日本企業は外国人を雇用する際「就労ビザを所持している外国人を探す」か「就労ビザを取得させる」必要があります。
就労ビザを新規に取得する場合、海外人材の学歴や職歴、雇用先企業の安定性などを総合的に判断されます。就労ビザの認可が下りない可能性も小さくはありません。
就労ビザの認可が下りる可能性が高いのは「専門的・技術的分野の在留資格」にかかる職種の人材。具体的には高度専門職や経営管理職、技術職などとなります。
外国人人材紹介に参入する場合は、日本国内の市場環境と「ビザ認可の難易度」を総合的に判断する必要があるでしょう。
今回は海外人材紹介の動向や市場環境、起業の方法などを解説しました。
国内の労働力人口が減少傾向にあるなか、高度海外人材は採用ニーズが拡大していく可能性が高い貴重な市場です。
高度海外人材を対象とした人材紹介に関心がある方は、ぜひ今回の記事を参考に、人材紹介業への参入を検討してください。
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