【インタビュー】人材紹介の立ち上げはこうやって失敗する
事業立ち上げが上手くいく紹介事業者と全く上手くいかない紹介事業者には、どのような違いがあるのでしょうか?人材紹介マガジンの編集部では、「人材紹介事業は立ち上げ時の戦略設計で成功の可否の9割が決まる」と言っても過言ではないくらい、立ち上げ時の適切な情報収集に基づく戦略設計が重要なのではないかという仮説を持っています。
本企画はそんな仮説を元に、エージェントの立ち上げ経験が豊富な株式会社キャライフの金子さんに、人材紹介の立ち上げ方についてインタビューしました。
これから紹介事業を立ち上げる皆様は、本記事のような情報を把握しているかどうかで、大きく事業成功可否が変わると言っても過言ではありません。紹介事業を成功させたい方は、ぜひご一読ください。
株式会社キャライフ 金子 勲様
1982年7月生まれ。Webサービス運営企業にて営業・製作・広告の各部門の現場を経て管理職となり、事業戦略・組織構築を経験。その後、創業期の人材紹介会社に転身し最高営業成績を収め課長職・部長職を勤めた後、大手外資系エージェントに転職。大手外資系エージェントにて組織拡大に貢献した後、複数の紹介事業立ち上げに参画。2018年7月、人材紹介事業並びに、紹介会社コンサルティングを行う株式会社キャライフを創業。
人材紹介の全体像を把握しないと適切な手は打てない
なぜ事業立ち上げ時の戦略設計が重要なのですか?
まず1つ目の理由は、人材紹介市場は非常に成熟した市場であり、戦略さえ間違えなければ、誰にでも事業成立の道を作ることができるからです。紹介事業未経験者でも、戦略さえ誤らなければ事業成功をしている事業者は多くあります。
次に2つ目は、どのような戦略を取るかによって、打つべき施策や使うべき集客方法などがまるで変わってくるからです。戦略も決めずに事業を立ち上げ、闇雲に紹介事業を運営していては、決定を生み出す難易度が高くなってしまいます。
例えば、大手人材紹介会社で成果を残されていた方も、独立する際に戦略設計を疎かにしてしまい、数ヶ月で撤退されるようなケースもよくあります。これは創業者やエージェントの営業力や面談スキルが高かったとしても、同様です。
経験に左右されず、どのような戦略設計をするかで、勝負が決まってくるのです。
理解を深めるため、ぜひ具体例を教えてください。
例えば、事業運営者の経験やスキルを鑑みて、求人型(サーチ型)の人材紹介スタイルを選択しているとします。求人型にも関わらず、一斉大量スカウト配信の集客サービスを使っていては、成果は限りなく出しづらいです。それを知らずに一度契約してしまったからという理由で、同じ媒体に固執してしまい、事業徹底に追い込まれるようなケースは多くあります。
また、紹介事業初心者という理由で、第二新卒層や未経験者にターゲットを絞って紹介事業を始めるケースも散見されますが、このようなやり方の難易度が低いという共通認識も幻想です。
つまり、自社や運営者の経験や強みから、適切なスタイルを選択し、そのスタイルにあったターゲット選定、そして集客方法などを決めていく必要があるのです。それができないまま、闇雲に事業を開始して上手くいくほど、紹介事業は甘くありません。
まずは紹介事業における全体像の適切な把握が重要なのですね。
大きく分けると人材紹介事業には、2つのスタイルがあります。
1つ目は、求職者ありきで、集まった求職者と面談し、マッチする求人を紹介していくスタイルである「求職者登録型」です。おそらく多くの事業者が無意識のうちに、こちらのスタイルを選択しています。最も紹介事業でポピュラーな形になっていますが、それだけレッドオーシャンなやり方でもあります。
2つ目は、求人ありきでマッチする求職者をピンポイントでスカウトしていく「求人型(サーチ型)」と言われるスタイルです。馴染みの深い言葉に言い換えると、ヘッドハンティングと呼ばれる言葉がイメージしやすいですね。こちらの方が競合は少なく、ターゲット選定や求職者スカウト方法を誤らなければ、事業難易度は決して高くなかったりします。
自社に合ったスタイルの選択が重要
それぞれのメリット・デメリットを教えてください。
まず求職者登録型のメリットは、一定数の候補者数を担保できる=決定数も安定しやすい傾向にあるという点があると思います。とにかく多くの求職者と面談をし、できるだけ多くの求人を紹介するというスタイルです。しかしデメリットとして、面談からの入社率は決して高くないだけでなく、社内に専門的なスキル資産が残る訳でもないので、半永久的に数の論理からの脱却が難しくなります。また、求職者の質の担保が難しく、1人あたりの決定単価の低下というデメリットも考えられます。
また求人型のメリットは、そもそも求人にマッチする方をスカウトするので、スカウトに成功さえすれば、スカウトした求人で内定獲得できる確率が、求職者登録型と比較すると高いことが挙げられます。求人登録型では、一度の求人提案で内定が出ることは少なく、追加で何度か求人を提案し、応募承諾を取る必要があります。しかし、求人型の場合は、何度も複数の求人の応募承諾を取る必要がないのです。またデメリットとしては、新規求職者との接点数が求人登録型に比べ、減少してしまう影響から、リスク分散が難しいことが挙げられます。また、魅力的な求人で決まりやすい求職者を口説く能力が必要なことにも注意が必要です。
なぜどちらのスタイルでいくのかを選択する必要があるのですか?
どちらのスタイルでいくのかによって、最適な求職者集客方法が異なってくるからです。冒頭に例を挙げたように、ここの選択を誤ってしまうと、いくら小さな改善を繰り返したとしても、泥沼に足を踏み入れたように、抜け出すことが難しくなります。
またターゲット選定との相性もあります。求人型(サーチ型)のスタイルを選択しているのにも関わらずに、未経験者層をターゲットにしても上手くいきづらいのは想像がつきますよね。
つまり、ここにおいて最も重要なのは、自分がどのスタイルを選択しているのか理解することが重要です。ここを混同したまま事業を開始すると、事業開始後の軌道修正が難しいのです。
では、スタイルの選択によって、集客方法はどのように変わるのですか?
スカウトサービスを利用する事業者が多いので、そちらに絞ってお話しすると、そのデータベースの登録者属性によって選択は変わります。1on1に向いてるDBもあれば、一括まとめスカウトが向いてるDBもあり、目的よって親和性のあるDBは異なるということです。また、そのスカウトサービスの料金体系にも注目が必要です。定額で大量送信が可能なサービスでは、スカウト流通量が多いため、求人型で1通1通文面を作成してアプローチしたとしても、そもそも読まれる可能性が低いため、徒労に終わってしまいます。
つまり、登録者属性だけでなく、スカウトの流通量や金額体系なども考慮した上で、戦略に合わせたサービス選定が重要なのです。
こんな紹介事業の立ち上げはうまくいかない
他に上手くいかない代表的なケースはありますか?
スタイルの選択を誤ってしまうケースです。例えば、新規営業に強い不動産業界出身の方が、求人型を選択してしまい、自身の法人営業力が活かせないというケースなども代表例の1つです。求人型の場合は、求人数はあまり必要ではないですからね。最低限の魅力的な求人に深く入り込んでいくイメージなので、法人新規開拓営業力が必要な場面が少ないのです。
また、創業者の出身業界に特化して始めて見たものの、そもそもの紹介ニーズがあまりないケースも散見されます。そもそも求人掲載で採用ができてしまう人気業界や、採用単価が安すぎて紹介を使う企業が少ない業界などは、よっぽど戦略設計が精巧にできている場合以外は、安定的な決定を生み出すのが難しいのが正直なところです。
具体例だけでも戦略設計の重要性が理解できますね。
数の論理で一定の成果が出るケースもありますが、最も重要なのは自身がどのスタイルを選択し、どのようなターゲットに、どのような方法でアプローチしているのかを理解することです。何も把握しないまま、とにかく事業を始めてしまうと、上手くいかなかった場合に軌道修正が難しくなります。最初に設計した戦略で上手くいかなかった場合には、次の戦略に切り替えるという判断を、適切なタイミングでできる状態にしておくことは重要ですね。
では一体どのように戦略やターゲットを選びとって行けば良いのでしょうか?
選び方にはいくつかパターンがあります。その人の経験やスキルで選択するパターンもありますし、その人がなぜ人材紹介事業を立ち上げるのかというミッションや想いの部分も大きく関係して来ます。またはマーケットの状況や今後の成長性も影響します。
選択肢をできるだけ多く把握した上で、自身にあったスタイルを選択していけるかがとても重要なのです。
金子さん、ありがとうございました。今回は、「なぜ立ち上げ時の戦略設計が重要なのか」という部分にフォーカスしてお話をお伺いしました。こういったノウハウが業界に流通することによって、業界全体が少しでも盛り上がればと思い、インタビューさせていただいております。
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