【エージェントインタビュー】商材を持たない人材紹介業だからこそブランド戦略が大事?
人材紹介マガジンでは、様々な人材紹介者様にインタビューをする中で、とある仮説を持っていました。それは、商品を持たない人材紹介事業だからこそ、事業で成功するためには、ブランド戦略がとても重要なのではないかという仮説です。今回は某有名IT会社の人事達が独立して、人材紹介会社を立ち上げたとの噂を聞き、立ち上げ時のブランド戦略についてインタビューして来ました。
▼株式会社TIXA ITEX CEO 鄒潮生(ツォウチャオション)
1987年1月生まれ。新卒で大手IT企業に就職、SEとして新規プロダクトで2年間製品開発業務に従事したのち、採用チームに移動。インド・中国での採用活動、国内の採用プロモーション責任者を担い、昨年比200%のセミナー動員を記録。1,000人規模の新人研修の企画実行を経て採用全体の責任者に就任。2015年には社長賞も受賞。述べ5,000名程度の社員の採用・研修に携わってきた経験を活かし、株式会社TIXA ITEXを設立、2018年6月より、転職エージェント事業を展開する。
細部にこだわり、ビジョンや想いに一本筋を通す
ツォウさんは、新卒の就職人気ランキングでもTOPクラスの人気を誇る企業で、人事責任者として多くの学生を採用する立場としてご活躍されていました。そんな中でなぜ独立して人材紹介事業を運営しようと思ったのでしょうか?
「働く」ということをもっと楽しくできるお手伝いをしたいと思ったからです。前職でも、「働くを変える」というテーマに対して、ITという手段を用いてアプローチしてきたのですが、転職エージェントなら、もっと手触り感を持ってやれると思ったんです。人事として多くの候補者と面接をしていると、傲慢かもしれませんが「もっと早くお会いできていれば状況を変えれたのではないか」と思うことが多くありました。
そんな時に事業会社の人事という立場では不合格をつけることしかできません。そこで○×をつけるだけでなく、その人のキャリアにもっとプラスの影響を与えたいと思ったんです。具体的には、もっとキャリアについて考える「総量」を増やすお手伝いをすることで、受け身ではなく、主体的に自分のキャリアを捉えてもらうきっかけを作りたいと思っています。
それを実現していくために、どのようなアプローチをされていくのですか?
2つのアプローチを考えています。1つ目はキャリアについて考えるハードルを下げたいと思っています。そのために、エージェントにキャリア相談する上での、「面倒」を極限まで削減したいです。私も転職活動した時に思ったのですが、大量に来る一斉送信スカウトメールやエージェントのオフィスに何度も呼び出されるなど、「転職活動は面倒だ」と思わざるを得ないことがたくさんありました。転職活動を楽にしたいのではなく、キャリアについて考える時間を最大化するために、候補者の方にとっての「面倒」をとにかく省いていきたいのです。
2つ目は、気軽にキャリアについて考えるきっかけを提供したいと思っています。そもそもが「キャリアについて考える」ということ自体が大げさではないかと思っていて、どんなことがしたいのか、どんな風にありたいのか、そういうその人らしさみたいなものを、少しずつ言葉にしていけばいいのではないかと思っています。5年後10年後に何をしたいのかを、無理に作る必要は一切ないと思っています。この想いを根底に、その人らしさを引き出せる面談をやりたい。楽しく素直に話ができるような場を提供していきたいと考えています。面談の場が堅苦しくて厳かな場である必要なんて、全くないんです。
素敵です。ここからが本日のテーマでもある「ブランド戦略」について伺っていきたいと思います。こういった想いを持っているエージェントさんはたくさんいると思います。しかし、中々社内外問わず、浸透しないという悩みを持っている経営者の方々も多いと思います。長年人事責任者としてブランド戦略にも携わって来たツォウさんはどのように考え、実行していますか?
まずブランド戦略は”2番目”だと思っています。1番重要なのは、どんな価値を世の中に提供できるかじゃないですか。そういったビジョンや想いがまずあって、次に細部まで一本筋を通すこと。それがブランド戦略に繋がると思っています。例えば、社名のTIXA ITEXという社名、”ティクサ・イテクス”と読むんですが、読みづらいし、覚えづらいですよね?(笑)実はこれ、早口でいうと私たちがとても大切にしている言葉である「適材適所(テキザイテキショ)」と語呂が近くなっているんです。人事や求職者に名刺を渡すとき、「なんて読むんですか?なぜこんな読みづらい社名に?」という疑問から始まる。その時に、「適材適所」という私たちの想いを紐付けて覚えてもらいやすいのです。
つまり私たちのストーリーや想いを一緒に伝えるきっかけを増やすことができるのです。そもそもエージェントってたくさんあって社名なんて覚えてもらえない中で、このエピソードを話すと”あぁ、あの適材適所のところね!”と思い出してもらえる。人材に関わる会社として、こんなに光栄な思い出され方、ないですよね(笑)それもこれも、伝えたいメッセージあってこそです。
敢えて疑問を持つポイントを作り、「想い」を伝えるきっかけを作る
「社名にこだわってはいるけど、その想いについて話すきっかけがない」という悩みは多いので、勉強になります。その他に想いやビジョンを認知してもらうためにやっていることはありますか?
求職者に対しては、細かい気配りだったとしても、ビジョンや想いに沿った行動を徹底しています。例えば、「面倒をなくす」という部分では、面談は求職者の要望に合わせて僕たちが赴いていますし、職務経歴書などの書類がない場合は一緒になって作っていきます。これは全てキャリアについて「考える総量」を増やしたいという想いからですが、他のエージェントがやっていないので求職者は疑問を持ちます。「なぜここまでしてくれるんだろう?」と。そこでまた私たちの想いを話すと、よりビジョンや想いが伝わりやすくなります。そしてそれが圧倒的な差別化になります。
つまり、短期的な利益を度外視しても、他社エージェントが面倒くさくてやらないこともどんどんやっています。これは長期的に見ると、私たち独自のブランドとなり、事業的にもリターンがあると信じています。僕たちがやりたい「想い」の部分を泥臭く形にすることで、ブランドが地道に出来上がってくるイメージです。
もう一つのアプローチで求職者に対して実施していることはありますか?
キャリアについて考える機会を増やすために、面談はとにかく気軽に来ていただき、楽しんでもらいたいと思っています。厳かな雰囲気にならないように、できるだけフラットな立場でいたいので、うちのメンバーの自己紹介もしっかりと行なっています。また面談する際にただアイスコーヒーを頼むのではなく、敢えてクリームソーダを頼んでみたり、今日みたいに敢えて牛乳プリンを食べてみたりしていますが、これが案外良いアイスブレークになるんです(笑) とにかくリラックスして、等身大の自分で本音を話してほしいという想いで、細部にこだわっています。
あとは、「友達を誘って一緒に飲みながらキャリアについて考えよう」みたいな企画を考えています。面談のゴールは「キャリアについて楽しんで考えてもらうこと」、そのためにできるアプローチは業界の常識にとらわれず、柔軟にチャレンジしていきたいと思っています。
先ほどブランドを構築するには、社内外問わずビジョンを軸として筋を通すべきとお話されていましたが、社内に対しても意識していることはありますか?
とにかくフラットで楽しく働くことを意識しています。まだカウンセラーとしての歴が浅いメンバーにも、私の面談に同席してもらっているのですが、「さっきの面談、深掘りできていませんでしたね」など と社長である僕にもどんどんダメ出ししてくれます。最高のメンバーですよね(笑)ギスギスしたチームで、数字ばっかり追いかけていると、それは接する人事にも求職者にも確実に伝わると思っています。
だからこそ、社内は明るく柔軟に仕事を楽しんでいる集団でありたいです。平日の夕方に、いきなり「葉山に行こう」と行って、社員で葉山に行ってみたりだとか。これは極端ですが、やっぱり大企業をやめてベンチャーをやっているんだぞ、とみんなで実感したくて、さらには”当たり前”や”常識”に囚われず、柔軟な思考で仕事を楽しんで仕事をしてもらいたくて、意識的にこういう非常識な提案をするようにしています。
シンプルに目の前にいる求職者一人一人を全力で支援する
まだ創業されて数ヶ月ですが、今後はどのように事業を進めていかれるのですか?
とにかく今は、2つの軸を大切にして、真摯に求職者に向き合っていきたいと思っています。人事をやっていた時によくエージェントの苦労話も聞いていたので、エージェントを始めてから、求職者がお金に見えてしまったらどうしようと怖かったのですが、いざ事業を始めてみると一切そんなことはありませんでした。ちゃんとすべての人が1人の人間として見えますし、本気で支援したいと思っています。だからこそ、短期的な利益などは度外視して、とにかく一人一人に向き合っていきたいと思っています。
とても素敵です。とはいえ、長年紹介事業を運営している方からは、「綺麗事では事業として成立しないのでは?」というお声も聞こえてきそうです。
そこももちろん理解した上で、このようなスタイルで事業を運営しています。正直、全力でサポートした求職者が、結果的に転職しなくても全然いいと思っていますし、弊社以外で転職を決めていただいても全然かまわないと思っています。そういうものは、私たちが負うべきコストなんだと思っています。
更に言ってしまうと、実はそんなに儲からなくてもいいとすら思っています。最低限でいいんです。最低限すらままならないということは、このコンセプトが世の中に受け入れられなかったということ。そのときは事業を畳んで別のことをやります。それくらいの覚悟を持っています。
ありがとうございました。ブランドの構築には、細部へのこだわりと他社と違うことをやる、短期的な利益を追わないなど、一種の覚悟のようなものが必要なんだと感じました。最後に今後の抱負を教えてください。
まずは若手の人材に対して、若いうちからキャリアについて考え、ワクワクしてもらえるように、これからも新しい打ち手をどんどんチャレンジしていきたいです。そこに対しての課題解決に近づけた際には、次はミドル層の方々にもキャリアにワクワクしていただけるようなサポートができる事業を考えています。とはいえ、あまり成功事例を聞かないこのスタイルを継続し続け、事業としても成功させるために、日々邁進して行こうと思っています。
そんな求職者価値の最大化をされている株式会社TIXA ITEXさまが利用されているのが、下記の求人データベースサービスです。法人営業に時間をかけていては、求職者への価値提供において差別化を測ることはなかなか難しいです。
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