【ベテランエージェントに学ぶVol.2】応募承諾数よりも追うべきもの
前回の記事では、ベテランエージェントである「面談での信頼構築方法」について伺いました。30シェアを超えた場合のみ、第2弾を公開しますと宣言していたのですが、なんと200近いシェアをいただき、2,000名以上の方々に記事を届けることができました。今回は、面談時のマイルストーンともなる応募承諾という部分にフォーカスして、より深いノウハウに迫っていきます。
株式会社morich シニアコンサルタント 塩谷夢香
1979年1月生まれ。アパレル業界向けRPOを経験し、パソナキャリアへ転職。キャリアコンサルタントとして、九州の工場閉鎖プロジェクトに赴任し、数百名規模の早期退職者のキャリア支援に従事。その後、複数のベンチャー企業にて人材紹介事業を含めたHR関連の新規事業立ち上げを経験。キャリアコンサルタント歴は10年以上、約4000名の求職者をサポートしてきた経験を持つ。「プロフェッショナル仕事の流儀」でも密着された伝説のエージェント森本千賀子にスカウトされ、2018年4月より株式会社morichに参画。
応募承諾数は追わない、本質的な価値提供にこだわり続ける
コンサルタントが面談時に追っているものといえば、入社に繋がって行く入り口のKPIでもある応募承諾数ですよね。塩谷さんは応募承諾を取るために、どのような工夫をしていますか?
「応募承諾を取るために」という観点では、特別な工夫はしていません。もちろん内定を獲得し売上を立てて行くために、内定率から逆算して応募承諾数を追うというやり方は、短期的な売上拡大を追うという意味では合理的な手法だと思います。
しかし、目先の数値だけを追っていると、本質的なキャリアコンサルティングからは遠ざかってしまうと思っています。目先の数値を追うからこそ、本質的な価値提供ができなくなってしまい、結果的に成果から遠ざかってしまっているパターンも少なくないと思います。
本質的なキャリアコンサルティングが大事だということですね。では本質的なキャリアコンサルティングとは一体なんなのでしょうか?「入社に繋げることこそが提供価値だ」という見方もできるのでは?という意見も聞こえてきそうです。
もちろんそれも大切ですが、企業と求職者のそれぞれの中長期的な課題を理解した上で、いかに入社後に活躍できる環境をマッチングできるか、という部分が重要だと思っています。
応募承諾という部分を切り取ってもそうなのですが、求職者の表面的な課題に対して、表面的なマッチングをしようと求人を提案しても、求職者にとっては何も響きません。相手の課題の深い部分を知るために仮説をぶつけてヒアリングを繰り返し、その課題に対して中長期的な視点でソリューション提案をすることで初めて、相手の心を動かす提案となり、求職者本人が思ってもみなかった奇跡のマッチングが創られると思っています。
その信頼関係を前提とし、お互いが短期的な目線では気づいていないようなマッチングを生み出すことがこそが、本質的なキャリアコンサルティングだと思っています。
中長期的な視点での課題深掘りが、価値提供へのキー
なるほどですね。それを象徴するような具体的なエピソードがあれば聞かせてください。
先日面談をした50代の方から、面談後に大変感銘を受けたと連絡がありました。内容はざっくりと下記のようなものでした。
「今までの面談では、職務経歴書を見て、これまでの経験やスキルをなぞらえるだけで、この経験ならこの求人が応募可能ですと紹介されてきました。でも塩谷さんとの面談では、私の深い部分までヒアリングしてくれた。紹介された求人はたった1つだったけど、社長の想いをそのままの熱量で代弁してくれた。選考に進むと塩谷さんから聞いていた通りの会社だったし、自分の想いと社長さんの想いが一致していて、すぐにでも一緒に働きたいと思った」
この案件も社長から直々に、創業の想い、現状や中長期の課題の深い部分までヒアリングをしていました。私の中でも腹落ちされるまで、何度も質問を重ねました。深く知れば知るほど、その会社に親近感が出てきて、なんとか力になりたいという想いが強くなっていきました。だからこそ、お互いの心に響くような、本質的なマッチングができたと思っています。
本質的なマッチングを生み出すためには、お互いの課題を深く知る必要があるということですね。
まさにそうです。
新人時代にありがちなのが、求人企業の人事担当者からの〇〇のような人が欲しいという短期的な課題を鵜呑みにして、言われた要件に合う人を紹介するという手法です。ここは経営者と現場人事で大きく思考が違うことが多いのですが、企業は事業課題を解決するために人を採用するので、その課題を解決するのに上がってきている人材が最適かは、求人企業内でも分かっていないことが多いんです。
つまり、企業はドリル(要望のあった人材)が欲しいのではなく、穴を開けてくれる機械(課題を解決してくれる人材)が欲しいのです。そのドリルはあくまで求人企業の仮説であるという認識をしっかりと持って、時には求人企業に自身の仮説をぶつけていく(別の人材を提案していく)ことも必要です。
御用聞きではいけない。経営者とも対等な関係性を保つ
そこまで深く求人企業にヒアリングすることで、求職者にも厚みを持って求人を提案できるということですね。
そうなんです。ここまで自分の仮説をぶつけて、企業の現状の課題、そして中長期的な課題、そしてその想いなどを理解することで初めて、求職者に本質的な求人提案ができると思っています。
そこまで深く知ると、自然と熱量を持って提案もできますし、候補者にマッチするという自信を持って提案ができます。結果的に提案する求人数が少なくなったとしても、入社まで導ける数は決して少なくなるわけではありません。そして長期的な視点で見ると、価値提供ができている求職者は、どれだけ時間が空いたとしてもまた自分のところに相談に戻ってきてくれます。
でも現場のリアルな意見からすると、「細かいことはいらないから、とにかくたくさんの人を紹介して欲しいと頼まれる」というようなリアルな意見も多そうです。
エージェントも企業を選ぶという視点を持つことが大切だと思います。
ビジネスでは、それぞれの価値交換の場と捉えると誰もが対等です。決してエージェントは企業の御用聞きになってはいけないと思います。お互いの御用聞きになってしまうと、エージェントの介在価値はなくなってしまいます。私はエージェントはミスマッチを減らすことが一つの使命だと思っており、双方の課題を深く知らなければ実現できません。
自分の介在価値は何なのか、求人企業と求職者それぞれへの提供価値は何なのかという部分は常に見つめ直すようにしています。
お互いが見えていないニーズを繋ぎ合わせることこそが価値
求人票の要件の人材ではなく、企業の課題に対してマッチングをしようとすると、企業から要望が上がっていない人材を紹介することになりますよね?
おっしゃる通りです。
潜在的なニーズこそが、深いマッチングに繋がるはずなのに、潜在ニーズを求人企業と求職者は知る方法がないわけじゃないですか。だからこそ、エージェントの介在価値が出てくるんです。そのように双方が見えていないニーズ同士を繋げることこそが、エージェントの仕事だと思っています。
最後に、エージェントの皆様にメッセージをお願いします。
私はやはり企業の中長期的な課題を解決することがエージェントの役割だと思っています。つまりエージェントは外部の人事部長のような役割を果たすべきです。新人の時は人事担当者と話が噛み合いそうなものですが、しっかりと経営的な視点を持って、事業課題に対する仮説をぶつけていかなくては成長しないと思い、私自身も多くの経営者と対話を繰り返してきました。その経験はエージェントとしてのキャリアに資産になりますし、これは若い内から繰り返すべきだと思います。
もちろんこれは企業の価値観やスタイルによって、正解や不正解があるものではないので、紹介会社の経営者はしっかりと自分のスタイルを明確する必要があると思っています。そして顧客を選ぶ勇気も必要だと思います。そこまで一貫したスタイルを持つことで、初めて従業員/求人企業/求職者の三方良しの関係性が作れるのではないかと思っています。私もこれから更に本質的な価値提供ができるようなエージェントになれるように、精進していきたいと思っています。
ありがとうございました。今回は応募承諾というテーマで面談についてのノウハウについてお伺いしました。前回同様にテクニック面というよりは、本質的なノウハウや考え方についてお話いただきました。
一旦は塩谷さんへのインタビューはこちらで終わりにしたいと思います。塩谷さんのノウハウを詳しく聞きたいという方は、ぜひ下記ボタンよりシェアお願いします。前回の記事を超える200シェア以上をいただいた場合のみ、さらに深いノウハウについてインタビューを実施したいと思います。
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