人材紹介事業の紹介手数料は何%にすべき?法規制と市況から考察する
人材紹介(有料職業紹介)の許認可申請時には、「どちらの手数料制度を採用するのか」の選択が必要になります。また、人材紹介事業においては、求人企業からの手数料のみが売上となるので、事業運営において重要な要素の1つであることは疑いようがありません。
本記事では、職業安定法上どのような法規制があり、それに加えて人材紹介市場の現況を鑑み、紹介手数料をどのように選択をすることが最適解なのかということについてしていきます。
人材紹介業の手数料(紹介料)における規制とは?
人材紹介業の許認可申請時は、必ず下記の項目を報告する必要があります。
・手数料制度の選択(上限手数料制or届出手数料制)
・上限手数料制の場合、求人受付手数料
・届け出手数料の場合、上限の手数料
許認可申請の具体的な手順については、こちらの記事で詳しくまとめています。
では許認可申請時に、手数料はどのように選択/届け出するべきなのか、それぞれの特徴を記載していきます。
人材紹介の紹介料の「上限手数料制」とは?
上限制手数料では、下記の上限が定められています。
紹介した労働者の6ヶ月の賃金の10.5%以下の手数料の徴収が可能。(免税事業者は10.2%以下)
つまり年収500万円の方の転職をあっせんした場合、半年分の賃金である250万円の約10%、25万円を手数料(売上)として受け取ることができます。
ちなみに、届け出手数料の場合は、500万円の30%(業界平均)で150万円なので、6倍もの差がでます。
よってこちらの手数料制度は、ほとんど利用されていないのが現状です。
人材紹介の紹介料の「求人受付手数料」について
また免許取得時には、求人受付手数料の記入を書類に求められる箇所があります。現状、求人受付時点で手数料を取るケースがほとんどないため、記入時に迷われる方がほとんどだと思います。選択しないで置くことが無難でしょう。
上限手数料を選択する場合は、670円以下の手数料の徴収が可能です。
しかし前述の通り、こちらを徴収している企業がほとんどいないため、求人受付手数料をとるとなると、求人企業との契約においてのハードルが高くなるでしょう。
人材紹介の紹介料の「届出手数料制」とは?
一般的に採用されている手数料制度が、届出手数料制です。
最大50%を上限に自由に設定可能です。
しかし、業界の平均手数料が30-35%と言われており、これを著しく上回る際には届け出時に合理的な説明が必要になります。
たとえばポジションの採用難易度や緊急性によっては、求人企業から手数料を高く設定してもいいと申し出がある場合もあります。
たとえば「サーチ型」と呼ばれる、管理職や経営層のヘッドハンティングを中心に手がける人材紹介会社では、「着手金」「成果報酬」に分けて手数料の支払いを受けるのが一般的です。着手金の相場は100万円前後、成果報酬の相場は求職者の理論年収の40%前後です。
またITエンジニアなどの集客が困難でかつ求人企業からのニーズが強い職種などは、50%の手数料を設定している人材紹介会社もみられます。
人材紹介会社のビジネスモデルについては、こちらでより詳しく述べています。
このように30~35%の手数料を上回る成果報酬を得られるケースも少なくないため、上限はできるだけ高く設定しておくのが無難でしょう。
人材紹介市場の市況から、手数料(紹介料は)何%に設定すべきか?
法律による規制は以上の通りで、多くの企業が届出手数料制を選択し、35−50%の紹介手数料を選択しています。
では手数料は、具体的に何%に設定すべきでしょうか。
今回は人材紹介市場の現況から解説していきたいと思います。
国内の採用市場は長らく「超売り手市場」が続いていたものの、新型コロナウイルスの感染拡大や2020年の東京オリンピックの開催延期などの影響により、市況が大きく変化。
時事通信の報道では、コロナ禍の企業業績悪化で求人数は2割低下。一方で解雇・雇い止めによって求職者の数が増加し、有効求人倍率の低下幅は「第1次石油危機後の1975年(0.59ポイント)以来45年ぶりの大きさ」とのことです(※1)
新型コロナの影響も踏まえつつ、1つ1つ見ていきましょう。
【料率35%以上】ハイクラス人材に対する採用ニーズは堅調
人材紹介における市況という観点からみると、手数料を決める際に考慮すべき要素は2つあります。
まず 1つ目は、有効求人倍率が低下する中で「不況下でも企業が求める人材とは、どのような人物なのか」を考えることです。
コロナ禍の緊急事態宣言や外出自粛、インバウンド需要の消滅によって多くの企業の業績は悪化。解雇や派遣切りを余儀無くされる企業が増えていることは事実です。
一方で、コロナ禍は「景気悪化の原因」と「対策」が明らかであることもまた事実です。新型コロナへの新規感染者数が減少に転じ、なおかつワクチン接種が世界的に進めばGDPの回復は早期に達成されるという見方もあります。
よってアフターコロナを見据え、経営の立て直しや新規サービスの立ち上げなどを担うことができる人材にについては、40-50%という手数料を支払うことを厭わない求人企業も増えてきているのが事実です。
ウィズコロナ時代の人材ビジネスについては、より詳しくこちらの記事で解説しています。
【場合によっては引き下げも必要】人材紹介会社同士の競争も激しい
一方で、実務未経験の「ポテンシャル採用枠」の人材に関してはまだしばらく採用ニーズは低調な状況が続くでしょう。場合によっては手数料率の引き下げも検討すべきかもしれません。
見逃せない業界内のトレンドには「人材紹介会社の増加」が挙げられます。
東京では毎月100件近い人材紹介免許の取得があり、差別化が難しい人材紹介事業にもかかわらず、業者間の競争は激しくなるばかりです。
求人企業にとっては、成功報酬という観点から「契約締結にリスクがないので、契約は簡単でしょう」という声も聞こえてきそうですが、工数という観点から紹介会社を絞る企業が増えてきています。
つまり業界平均以上の手数料設定をする場合は、求人企業に対しても、独自で提供できる価値とその根拠の説明が必要です。
上記2要素を鑑み、自社の人材紹介事業における独自価値や競争優位性は何なのかという観点を取り入れて、検討していくのがいいでしょう。
もちろん、他社と違う価値提供ができ、求人企業がいい人材を採用できるのであれば、高めに手数料設定にしたほうが、事業運営は楽になります。
まとめ
免許申請時は、届出手数料を選択肢し、上限の手数料を届出する。その際に、自社独自の提供価値や競合優位性について考えてみると、迷いなく紹介手数料の設定ができると思います。
(※1) 時事通信
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