転職支援ではなく目的達成の支援を!本質的な価値にこだわる面談術に迫る
プロフィール 日比 大輔
大学卒業後、新卒で国内大手ヘッドハンティング会社に入社。5年半の間に法人営業・ヘッドハンティング業務を経験。社会人3年目の終わりから起業するために活動を開始し、2016年6月に退職するまで1年間の複業期間を経て、友人たちと株式会社ジョブライブを創業。「やりたいをシゴトに」をテーマに起業・複業・転職の支援、コワーキングスペースの運営、働き方の情報発信メディアの運営、無人島活用事業などに関わる。2018年1月独立。
自分自身が体験したような大きな変化を、多くの人に。
Q.人材紹介事業を運営する中で、最も重要視されていることはなんですか?
求職者にしっかり時間をかけて寄り添うことです。
「転職したい」と思い、相談に来てくれる人は現状に何かしらの課題を持っています。その課題やご自身の価値観に向き合わないまま、環境だけ変えたとしても、次の転職先で同じ壁にぶちあたってしまいます。
しっかりと求職者に寄り添い、本質的な課題解決のために、まずは自身の状況を理解して言語化するということに注力しています。
Q.新卒で大手ヘッドハンティング会社に入社されてキャリアをスタートされていますが、求職者に寄り添うというスタイルはその時に身についたものなのでしょうか?
キャリアをスタートしたときは、売上や成果という部分にフォーカスしていたので、求職者に寄り添うというスタンスを貫いていたわけではありませんでした。
しかし、そのときの売上主義のやり方に違和感を感じていた部分もあり、なかなか成果が出ませんでした。そんな時に、とあるきっかけで「起業塾」というコミュニティに参加し、自分が何をしたかったのかを突き詰めて考えたことで、自分の人生に大きな変化が生まれました。
私が身をもってこの経験をしたからこそ、求職者にも自分のことを知ることで、キャリアの見え方が大きく変わるような体験をして欲しいと、人材紹介事業を1から立ち上げることになりました。
求職者の集客にかける費用は0円!その面談ノウハウとは
Q.求職者のやりたいことを第一に優先される中で大切にされていることはありますか?
「じっくりと時間をかけてその人の悩みや価値観を言語化してあげること」を大切にしています。 相談に来る人のほとんどは、「自分のやりたいことがわからない人」や「分かっているけど実現の方法がわからない人」です。
その人たちに対して、私のスタイルは、とにかく『やりたいことが何か?』という部分を一緒になって考えることを大切にしています。そしてやりたいことや実現方法を考えるにあたって、必要な考え方や事例などの材料をどう提供するのかというところを、徹底的にこだわっています。
Q.キャリア面談はどのような流れで実施されているのでしょうか?
まずはご本人の価値観を過去の経験から探っていきます。その上で、過去に感情の起伏が大きかった部分を突き止め、「なぜそうだったのか?」を深掘りしていきます。もちろんすぐにやりたいことが見つかることは少ないので、こちらから質門を投げかけて方向性を示してあげ、それをホワイトボードに書き込みながら、一緒に考えていくという方法をとっています。
また、ご本人の考えが浅い部分については、抽象的な言葉が多くなってくるので、具体化のサポートをしていきます。その上で、価値観が明確になってきたら、仕事に落とし込むという思考プロセスを繰り返します。
両極端の選択肢を提示し、方向性から明確化していく
Q.実施されていることの具体例を教えてください。
言語化ができない壁にぶつかった際に、方向性を提示してあげるということです。
例えば、 人の役に立つ仕事をしたいという漠然な想いを持っている求職者の価値観を具体化していくとしましょう。人の役に立ちたいという漠然な想いがある中で、さらに1段階思考を深めていきたい、そんな時に両極端の例を提示します。
両極端の選択肢があると、求職者は方向性を選択をしやすくなります(「どちらか言えばこちら」というように)。続けて、なぜその選択だったのかということを深掘りしていくと、徐々に漠然としていた想いは具体的になっていきます。
Q.その時に注意すべきことはありますか?
尋問のように質門を繰り返すのではなく、一緒に考えるというスタンスを持つことです。
ホワイトボードに書き込みながら、「なんでそう思ったんだろうねー」と一緒に考えることで、こちらから出す選択肢や例の精度も高くなりますし、気付きも多くあります。また、ここまで一緒に考えてくれるんだと、求職者さんの期待値を超えることができるので、面談している時間への顧客満足度も高くなります。
Q.効率を重視されている会社さんが多い中、求職者に時間をかけることで良かったことはありますか?
求職者さんのご紹介をたくさんいただけるようになったことです。私が面談している求職者さんは、ほとんどが求職者さんからのご紹介です。つまり、集客に一切費用がかかっていないので、事業原価を抑えることができています。
どのようにご紹介いただいているのか気になって聞いてみると、「とにかくいい人がいるから会っておいで!」と紹介されているパターンも多いです(笑) それだけ信頼いただいている証拠でもあるので、とてもうれしいですね。
企業については、いい情報も悪い情報も引き出す
Q.そこまで求職者さんに信頼いただくと、ご紹介する案件情報の信頼性も重要になりそうですが、どのような工夫をされていますか?
人事担当者(もしくは経営者)にも信頼してもらうために、深くお付き合いを重ねます。
求人企業の人事担当者の方も人間ですので、信頼関係がないままに、会社の課題などのマイナス面は話してくれないと考えています。しかし、求職者にはメリット・デメリットすべてお伝えした上で、求人を受けてほしいと思っているので、マイナス面の情報も入手することが重要だと考えています。
信頼して負の側面も話してもらえるように、求人企業の人事(経営者)の方とはできるだけお会いして、仲良くなるようにしています。アポイントの場だけのお付き合いだけでなく、お酒を飲みに行くこともよくあります。やはり、人材紹介事業は、人と人を繋ぐという対人のビジネスなので、こういう細かい努力が重要だと考えています。
Q.他に工夫されていることはありますか?
面接はできるだけ同席させていただいています。求職者のフォローのために同席するエージェントの方は多いと思いますが、「企業理解を深くする」という意味でも同席しています。
また、自分の求人の説明とずれはないかというところをチェックし、改善していくことができるというメリットもあります。とにかく求職者に嘘はつきたくないですし、メリット・デメリットを包み隠さずお伝えした上で、入社してほしいので、ここは一切妥協はしません。とにかく人との接触面には時間をかけています。
AIの普及や情報化社会におけるエージェントの価値
Q.人材エージェントの価値について考えられている事業者の方も多いです、日比さんはどのように考えられていますか?
正直、現代では求人情報がweb上にあふれているので、ただ条件に合わせてマッチングするだけだと全く価値がないと考えています。
ご本人ですらも言語化できていない求職者の悩みを言語化していくこと、その言語化したものを実現に向けてサポートすること。これは、今後しばらくはAIの技術が発達してもできないことだと思っています。
また、転職エージェントという言葉はあまり好きではありません。あくまで転職って人生の中の1つの手段だと考えているからです。手段のエージェントって全然本質的ではないですよね。本質的な価値提供ができてこそ、エージェントが介在する付加価値があるので、今後も本質的な価値提供を追求していきたいと思っています。
このような成功しているエージェントは、求職者との面談の時間を一番大切にしています。この時間を増やすためにも、他の誰でもできる業務は早めに外部サービスを使うなどで削減しておきましょう。
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