飲食店が人手不足に陥る原因は「待遇」「定着率の悪さ」!市場動向/解決策を解説
2022年5月時点で宿泊業/飲食サービス業のハローワークの新規求人数は、前年同月と比較して54.3%増。飲食サービス業の採用ニーズは復調傾向にあると言えます。
一方で2021年10月17日の日経新聞の報道によると、コロナ禍での飲食店の閉店数は4万5000店に上るとのこと。
飲食業は特色として「人材の流動性が高い」ことが挙げられますが、休業/閉店が相次いでいることから一層流動性が高まっていると言えるでしょう。
今回は飲食業の市場動向や、人手不足に陥りやすい原因を解説します。
飲食業の市場動向/市場規模
外食産業総合調査研究センターによると、2021年の外食産業の市場規模は18兆2005億円。2019年には26兆円規模だった市場が、およそ3割の需要を消失したことになります。
特に新型コロナの影響が大きかったのは、居酒屋/バーを中心とした飲酒業態。夜間の営業自粛の影響が大きく、売上を縮小しています。
2022年に入り、飲食業は全体的に持ち直していることも事実。2022年4月時点では、飲食業全体の前年同月比は113.5%。13.5%のプラスです。
とはいえ「3割の需要を消失した」後の「13.5%の回復」のため、先行き不透明感は未だ強いとも言えます。
マーケットの規模に対する「店舗数の過剰さ」が特徴的
コロナ以前から、飲食業は「人材の流動性が高い」業種でもありました。
総務省「経済センサス・基礎調査」(平成21年)によれば、全国の飲食店の数は 67万468店。たとえばコンビニの総数と比較すると、日本フランチャイズチェーン協会のまとめによると2020年末時点で5万5924軒。調査タイミングの違いこそありますが、飲食店の総数は「コンビニの約10倍」です。
ちなみに市場規模としては、飲食業はパチンコ/パチスロ業と近しく、ともに「およそ20兆円」が目安。そして全国のパチンコ店舗数は、矢野経済研究所の調べによると8139店と、1万店以下です。
つまりマーケットのパイに対して、店舗が過剰に多いのが「飲食店」の特徴です。
そのため1店舗当たりの売上高を伸ばす難易度が比較的高く、経営改善のために固定費を削減する方向性に向かいがち。よって非正規雇用や長時間労働が常態化しており、飲食業の人手不足感を招く理由にもなっています。
飲食店が人手不足に陥る原因は「待遇」「定着率の悪さ」
前述の通り、飲食店が人手不足に陥る原因は非正規雇用や長時間労働の常態化。つまり労働の内容に対して、待遇が低く、離職率が高いことにあります。
「離職率の高さ」は経営上のリスクでもあります。1名が離職した場合、同等程度のスタッフを採用するためには「時間」も「求人広告費」も「教育コスト」もかかります。
無論、求人広告費や教育コストがどれくらいのものかは店舗によって違いますが、一説には「1名の離職は100万円の損失に相当する」とも言われます。採用や人材の定着に関しては、飲食業は負のスパイラルに陥っているとも言えるかもしれません。
【参考】美容師は「フリーランス登用」が徐々に広まりを見せている
ちなみに飲食業と同様に、非正規雇用や長時間労働の常態化で、離職率が高い業種に「美容師」が挙げられます、
しかし美容師は「フリーランス美容師」という新しい働き方の登場で、徐々に労働環境が改善傾向にあります。
1名の美容師が複数のサロンを兼務して収入を増やしたり、契約内容を調節することで「施術と接客のみに集中し、在庫管理や集客業務は社員に任せる」といった調整がしやすくなったことが大きな要因。代表的なサロンには、カカクコム創業者が立ち上げた「ALBUM」が挙げられます。
美容業界のフリーランス活用については、こちらの記事で詳しくまとめています。同様のトレンドが、今後「飲食店のシェフ」などにも広がる可能性はあるかもしれません。
飲食店の「待遇」「定着率」を改善する方法
飲食店の「待遇」「定着率」を改善するには、基本的には「労働条件を見直す」ことが重要です。アルバイト人員の募集と離職を繰り返すのではなく、「品質の高い正社員スタッフを1名雇用する」といった発想に切り替えていくことは重要でしょう。
ハイクラス人材のスポット採用という選択肢もある
「正社員スタッフを雇用して、固定費が増大することは厳しい」といった場合は、ハイクラス人材のスポット採用という選択肢もあります。
優秀な人材に短期間だけ「メニュー開発/改善」「業務フローや店内の導線の改善」「社員の教育」を依頼するというものです。人材が定着しない理由は「業務フローが複雑すぎて、ミスが頻発している」「教育が行き届いていない」といった要因がからんでいる可能性もあるためです。
そのため、店の運営体制を外部の力を借りて見直すことで、社員/スタッフの満足度が上がる可能性もあるでしょう。
【人材紹介会社の担当者向け】飲食業の人材紹介の将来性
最後に、人材紹介会社の担当者向けに「飲食業の人材紹介」の将来性を解説します。
「フリーランス」が広がる可能性はある
結論から言えば「フリーランス」が広がる可能性はあるでしょう。
前述の通り、飲食業に先駆けてフリーランスが広がりだしている業種に「美容師」が挙げられます。
美容業界のフリーランス向けのマッチングサイトの代表例には「AIR SALON」が挙げられます。AIR SALONを通じて、美容師は「スポットで施術できる美容室」を探し、施術席の貸し借りが可能。あとは自身の顧客を当日、施術席に招き、カットやカラーを行うだけです。
AIR SALONは「サロン」と「フリーランス」の席単位のマッチングサービスですが、CtoCで美容師と一般の客を繋ぐサービスも少しずつ登場しています。
同様に「フリーランスのシェフ」が間借りをするような形で飲食店とマッチングし、料理の提供を行うような形態のビジネスは拡大余地があるでしょう。
「フリーランスのシェフ」という働き方が、まだまだ広がってはいないのが現状ですが、将来的に「フリーランス」と「場所を貸したい店」のマッチングをサポートするようなビジネスは広がっていく可能性があるかもしれません。
アグリゲート型サイトの参入余地もある
人材紹介会社が現実的に手掛けるとすれば「アグリゲート型サイト」は要注目です。アグリゲート型サイトとは、Indeedに代表される求人の「横断検索サイト」です。
飲食店は、現実的には「アルバイト」が多い業種です。そのため求人案件数も、求人を出す店舗数も膨大。なおかつ求人の出し方も「SNS」から「お店のブログ」まで様々です。
大量の求人をスクレイピングによって横断的に検索可能としたうえで、店舗に対して安価な月額掲載料金を求めるようなビジネスモデルは検討の余地があります。
全国に67万店ある「店舗数の膨大さ」をトリガーに、拡大できる可能性があるでしょう。
「正社員採用ニーズ」は慎重な見極めも必要
一方で「正社員採用ニーズ」は、市場規模がコロナ前に戻り切っていないことや、そもそも店舗数が「過剰」であることを踏まえると限定的でしょう。
「飲食業の正社員」にターゲットを絞って、人材紹介を行うことを検討しているならば「どれくらいニーズがあるか」慎重な見極めが必要です。
まとめ
飲食業の採用動向や市場規模、人材紹介の参入可能性を紹介しました。
飲食業の市場規模は「パチンコ」と同等ですが、パチンコが1万店未満であるのに対し、飲食店は67万店。67万店という数値は、コンビニの約10倍です。
アルバイトスタッフへの採用ニーズは今後も高いとみられる反面、正社員採用ニーズは限定的と推察されます。つまり人材ビジネス事業者が飲食業の人材を扱う際は「店舗数の膨大さ」を活かしたビジネスモデルの検討の必要性があるでしょう。
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