女性求職者が本当に頼りたいキャリアアドバイザーとは┃キャリアアドバイザー 江﨑 麻里奈 氏
人材紹介を行う上で、「キャリアアドバイザー」と「求職者」が強固な信頼関係で結ばれている状態は、選考離脱を防ぐことはもちろん成約率にも多大な影響を及ぼすことから重要であると考える紹介事業者が多いかと思います。特に女性求職者は知人を介した「口コミ」を重視する傾向がありますので、信頼できるキャリアアドバイザーを見つけると一気に周辺コミュニティでポジティブな口コミが広まり、積極的に知人紹介が得られる等、中長期の集客においても有効です。
一方、その手段はアドバイザーの力量やキャラクターに委ねられることが多く、属人的になりやすい部分です。今回は、過去に出会ってきたトップエージェントの中でも特に女性求職者の成約率が高く、女性求職者が頼りたいとこぞって指名するキャリアアドバイザーの3つの特徴を事例と共にご紹介します。
ビジネス(お金)を無視した+αの支援をしてくれる
女性求職者には営業希望が増加してきているとは言え全体数で言えば少数派であるように、営利が絡む関係に抵抗感を持つのは圧倒的に女性に多い傾向であるように思います。背景がしっかり伝わっていれば良いのですが、「まずは10件応募しましょう」と選考を急かしたり、「他のエージェントを使わないでください」と求職者の選択肢を奪うような発言があると、ビジネス(お金)の嫌悪感から一気に心のシャッターを閉ざす女性求職者は多いのではないでしょうか。
一方、女性求職者から「それ、お金にならないですよね?」「どうしてそこまでしてくれるんですか?」と仰っていただけるレベルの介在をするキャリアアドバイザーがいます。奨学金支払いが苦しい求職者であることを察し、一緒に返済計画を考えながら転職に加えて副業のような視野を広げる情報提供をすることもあります。また、上京予定の求職者には転職だけでなく住む場所や生活費について心配し、治安の良い地域や住宅情報サイトを一緒に眺めながら初期費用を抑える方法を考えたりと、それはまるで家族や親しい友人に対して行うような行為です。
これらは莫大な工数がかかるように思えますが、結果的に深い信頼関係が生まれ、恩を返そうとするのもまた女性に多い傾向です。最終的には目の前の女性求職者の離脱を防ぐだけでなく、周辺の知人を紹介してくださったりと、長期的な視点で歩留まりの良い手段となります。
潜在的な心理状態を察して言語化してくれる
女性の「大丈夫」は大丈夫ではないことがほとんど。特にビジネスシーンでは自信のなさから本音を偽り、遠慮や謙遜の気持ちから取り繕う女性求職者は多いと言えます。
例えば、希望年収をヒアリングして女性求職者が「350万円」と言ったとしても、それが本音だと考えるのは時期尚早です。実際問題350万円で良い訳がないけれど、そう言わなければ経験が少ないのに何を言っているんだと敬遠されてしまい、良い求人を紹介してもらえないのではないか。採用されないのではないか。と思って「350万円と発言する女性は世の中には沢山いらっしゃると思います。
そこに気付けないことは問題ですが、気付いてはいるけど実現不可能だからと触れないアドバイザーと、察してしっかり言語化してくれるアドバイザーでは、実現するかどうかは別として信頼関係に雲泥の差が生まれます。男女関係なく言えることですが、特に女性は「言ってはいけないのではないか」という価値観を根底に持っていることが多いので、潜在的な心理状態には一段深い配慮が必要です。
女性が転職を検討する背景は「仕事」「結婚」「出産・育児」だけではありません。「恋愛」「住居」「お金」「趣味」「副業」「独立(起業・フリーランス)」「親との関係」「交友関係」「介護」「健康(病気)」「人間関係」「リスキリング(リカレント教育)」、他にも挙げればキリがありませんが、まだ起きてもいない先々の未来まであらゆることを想定して心配しているケースも考えられます。
しかし、こうした事情を専門外と突っぱねてしまうのか、専門的な助言はできずとも寄り添うことでこうした情報を引き出しキャリアに絡めて助言することができるのか、キャリアアドバイザーの器量が試されるシーンです。
ロールモデルを紹介して可視化してくれる
ご自身が求職者と同じ経験を持つロールモデル的な存在であれば最善です。しかし、かけ離れたバックボーンを持っている場合は信頼関係を結ぶ難易度が高いと言えますので、振り分け時点でマッチングを工夫している事業者も多いと思います。例えば専門卒で結婚出産によるブランクがある事務職女性に対し、高学歴でコンサルや営業出身の男性キャリアアドバイザー、という組み合わせになると「私の気持ちをわかってもらえないのではないか」と思われるリスクがあり、ミスマッチが生じやすいと考えられます。
しかし、属性が異なる場合でも信頼関係を構築できるキャリアアドバイザーは、ご自身がロールモデルにはなれなくてもそうした人物と比較的近い場所にいる存在として深い理解があります。例えば奥さんが同じような経歴であり悩みを聞いてきた存在であるとか、社内にいるバックオフィスの女性を引き合わせてくれたり、過去にご支援したクライアント先で活躍する女性について詳細に紹介する等、実在する人物を具体的に挙げることができます。
この事例紹介が抽象的で実在するのかイマイチ信憑性に欠けるトークでは女性は安心して物事を決めることができません。特に転職エージェントを頼っているポテンシャル層の女性であれば、ファーストペンギンになれるタイプは一握りです。同じ境遇の人物を具体的に特定できることで、安心してその道に進む意思決定ができる女性は多いようです。
女性求職者にロールモデルを直接引き合わせることができなくても、実在する人物の写真や記事を見せたりSNSの存在を明かすことで解像度を上げてもらうことができます。女性求職者を支援した先に目標となるロールモデルとなる女性の存在を把握し、引き合わせたり可視化できるようにしておくと良いでしょう。
ポテンシャル層の女性求職者とは信頼構築に工数をかけるべし
いずれも工数問題で決して容易なことではありませんが、求職者との関わりを効率的に考えすぎてしまうと情報に強い女性求職者との関係構築は困難です。
女性はなぜ転職を考えるのか。その複雑な背景や事情に想像力を膨らませることができるキャリアアドバイザーであれば、結果的に少ない面談数・稼働数でも安定した成約実績と集客が成り立つのではないでしょうか。
(文・江崎麻里奈)
Profile
キャリアアドバイザー
江﨑 麻里奈 氏
千葉県出身。SHE inc.事業推進・コミュニティマネージャー。
2020年までCDCでtype転職エージェントのキャリアアドバイザーを努め、若手求職者を転職成功に導きながらシニアマネージャーとして女性の転職支援チームを牽引した。
その後、個人で転職コミュニティを主宰しながら中小企業のRPO(採用・スカウト・面接)を行う等、大手・ベンチャー様々な企業の採用・教育に携わる。マイナビ運営キャリQアドバイザー。Twitterを中心にSNS発信・コラム執筆をしている。
▼SNS情報
Twitter(https://twitter.com/MarinaEsaki)
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