【人材紹介会社向け】「おとり求人」は求人掲載サイトに載せても大丈夫?法的リスクは?
人材紹介会社にとって、避けては通れない問題が「おとり求人」。この記事を読んでいる担当者の方の中にも「応募者を獲得するために、募集終了済みの過去の人気求人を再掲載したい」という誘惑にかられている方はいるのでは。
今回はおとり求人を掲載する法的リスクや、様々な対処法を解説します。
おとり求人とは
おとり求人とは、実際には存在しない、または虚偽の情報を含む求人を掲載することを指します。人材紹介会社が集客を目的に、たとえば著名企業の求人や「相場を超えてはるかに好待遇な美味しい案件」を求人サイトに出すケースがあります。
人材紹介会社が「おとり求人」を作る目的とは
おとり求人は、求人掲載サイトのアクセス数や登録者数を増やすために使用されることが多いです。また、おとり求人を入り口にして転職希望者を集め、別の求人に誘導することがあると言われています。
実際のおとり求人にはどのようなものがある?
実際の おとり求人には、以下のようなものが多いです
・すでに採用が決まっているにもかかわらず、募集が引き続き掲載されている求人
・募集が取りやめになったにもかかわらず掲載が続けられている求人
・転職エージェントが無断で掲載している求人
こうした求人が掲載されている理由には「PV数や応募数が多いため、採用が決まったとしてもその求人を取り下げたくない」といった人材紹介側の事情が働いていることが多いです。
おとり求人の掲載に関する法的リスク
職業安定法違反で刑事罰を受ける可能性がある
職業安定法では、虚偽の条件を提示した求人広告を行うことを禁止しています(職業安定法65条8号)。
「虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を提示して、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行った者又はこれらに従事した者」は、「六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」が課せられる可能性があります。
このように求人掲載サイトの運営者(転職エージェント)が主導して行うおとり求人については、刑事罰を受ける可能性があります。求人票には採用条件など、求人に関する正確な情報を記載することが重要です。
景品表示法違反にも該当する可能性がある
景品表示法では、不当な表示の禁止が定められており、おとり広告も禁止されています(景品表示法5条3号)。
おとり求人は「取引を行うための準備がなされていない」または「実際には取引する意思がない」として、景品表示法違反に該当すると判断できるためです。総じておとり求人によって、求職者に実際と異なる情報を提供することは、求職者の適切な判断を妨げ、違法行為に該当する恐れがあると言えます。
おとり求人について転職エージェントからよくある質問
サイトの集客面を考慮すると「掲載終了したくない案件」がある。どうすればいい?
その求人のエンドクライアントに許可を取ったうえで、掲載を続けると良いでしょう。
たとえば「即時に採用の予定が無かったとしても、掲載を続けると優れた人材から応募が来る可能性があります。またこちらからお願いして掲載を続けていただく形なので、この掲載については料金などもいただきません」などとすると同意してくれる人事担当者もいるでしょう。
「非常に優秀な人材の応募があれば採用を検討する」という意向が確認できていれば、必ずしも虚偽広告には当たりません。
「社名非公開」での求人掲載は問題ない?
企業名を非公開にすること自体は問題ありません。たとえばフリーランス人材の採用では、企業名は非公開の求人が主流です。よって社名非公開の求人を載せることは、おとり求人には該当しません。
ただし、求職者からすると、応募先が分からないため、情報収集ができないというデメリットがあります。また、応募者と面接が進む段階になって初めて企業名が明かされる場合、求職者にとって不安や煩わしさを感じることもあるため、採用成功率が低下する可能性があります。そのため、求人票には、できるだけ企業名を明示し、非公開の場合は理由を明記することが望ましいでしょう。
人材の品質次第で明確な報酬を決めたいという企業もいる。求人票にはどう書くべき?
人材の品質によって報酬が変動する場合は、変動の基準を明記することが必要です。なお広告では「月収60万円」などと記載したものの実際の求職者への提示額は「月収45万円」といった場合は、求職者におとり広告であったと疑いをもたれてしまうリスクもあります。
本当に求人が終了してしまったが「おとり求人ですか?」と求職者に聞かれた。どうこたえるべき?
求人サイトの運営者にとっては「募集終了した求人」を都度都度引き下げるのは、工数がかかる大変な作業です。
中には募集終了したのに掲載を続けており、求職者から「まだ募集していますか?」という問い合わせがあることもあります。その際は、正直に求人が終了した旨を伝え、今後の求人掲載についての予定がある場合は、その旨を伝えることが望ましいでしょう。
まとめ
今回は、「おとり求人」という、掲載されている求人が実際に存在しない、または実際には募集されていないにもかかわらず掲載されている求人について、法的リスクやその掲載に関するよくある質問を紹介しました。
人材紹介会社にとっては、たとえば「非常にPV数がある求人が募集終了してしまった」際にその求人を引き下げるのは辛い判断です。そうした際は「無断で載せ続ける」のではなく、エンドクライアントに相談し「本当に優秀な人材から応募があれば採用を検討する」という意向がある場合に、掲載を継続する等虚偽広告とならない工夫をしてください。
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