

人材紹介サービスを利用し、採用を行った企業が仲介役の紹介会社に支払う報酬が「紹介手数料」です。
より詳しく、人材紹介会社の手数料・報酬の仕組みや相場について1つ1つ見ていきましょう。
冒頭で記載した通り、採用を行った企業が人材紹介会社に支払う手数料が「紹介手数料」です。
人材紹介サービスの紹介手数料は成果報酬型が主流。リテイナーフィーや着手金が発生する一部の例外を除き、紹介された人材が採用に至らなかった場合には支払いは不要です。
また事前に支払っていた場合も、返金されます。
人材紹介会社の手数料・報酬の仕組みには「届出制手数料」「上限制手数料」の2パターンがあります。
まずは手数料の仕組みと相場、算出方法を解説します。
「届出制手数料」は事前に厚生労働大臣に届け出た範囲内でのみ、紹介企業が手数料の額を定め、受け取ることができるものです。
手数料の上限は理論年収の50%で、一般的な相場は30%~35%が目安です。相場を著しく上回る手数料を設定する場合には、届け出の際に合理的な説明が必要となります。
「上限制手数料」は、紹介した労働者の6ヶ月の賃金の10.8%以下の手数料の徴収が可能です。
ただし、2020年現在では上限制手数料を採用している人材紹介会社はほとんどありません。
前述の通り、手数料の相場は理論年収の30%〜35%です。
計算の土台となる理論年収とは、「採用された人が一年間働いた場合、どれくらいの収入を得るか」を推定した金額です。あくまで推測値であり、実際に支払われる年収とは乖離がある点に注意が必要です。
理論年収は以下の式で算出できます。
より詳しい算出方法や計算例は、記事の後半で解説します。
一般的な紹介手数料の算出方法は「理論年収×30%~35%」です。
理論年収500万円の人材が、紹介手数料30%の人材紹介会社経由で転職する場合、手数料は150万円となります。
手数料の発生タイミングはほとんどの場合、入社日です。
「入社日=請求日」とした上で、紹介した人材がきちんと入社したか人材紹介会社が確認を行った上で請求書を発行します。
入社直前で不安から内定辞退に至ることがないよう、人材に対して十分なフォローを行うことも人材紹介会社の役割です。
人材紹介会社の手数料として、成果報酬型の他に「着手金」が必要なケースがあります。
これらのケースは「リテイナー型」とも呼ばれ、案件の開始時にリテイナーフィー(着手金)を紹介手数料の一部として請求し、採用決定時に残りも請求するというものです。
着手金が必要な案件は、基本的にヘッドハンティングなど「人材紹介の難易度が高い」ものです。以下が一例です。
案件に応じて成果報酬型とリテーナー型を使い分ける人材紹介会社もあります。
着手金が発生する場合、紹介した人材が採用に至らなかった場合でも「着手金の返金」はありません。
ただし、クライアントからは採用が成功するまで中長期的にコミットすることを求められることも多いです。
人材紹介会社の手数料は、理論年収に手数料の割合を掛け合わせた金額が基本となります。
理論年収は年収のモデルケースであり、人材紹介会社経由で人材採用する際の手数料の根拠です。
理論年収の正しい計算方法や役割についても、1つ1つ見ていきましょう。
理論年収とは、「採用された人が一年間働いた場合、どれくらいの収入を得るか」を推定するもの。
計算方法は以下の通りです。
上の式では月々に受け取る給与を「X」とし、12ヶ月分の給与と賞与を足した数字が理論年収となっています。
Xの内訳は、基本給+各種業務手当。各種業務手当とは、月々のみなし残業代や役職手当、住宅手当などを指しています。
理論年収には「毎月変動する残業代」は含まれず、あくまで「月々固定の残業代」しか計上されないため注意が必要です。
たとえば、下記2件の案件の理論年収を算出してみましょう。
上の場合、求人Aの理論年収は「40万円×12カ月+賞与」で、515万円。
求人Bの理論年収は「45万円×12カ月」で、540万円。求人Bの方が理論年収が高いことがわかります。
案件の理論年収より、実年収が低いと不満を漏らす人も中にはいます。
年収は求職者にとってはもっとも大切な項目の1つのため、事前に提示されていた年収と手取りの額にあまりにも大きな乖離がある場合、入社後のモチベーションが低下し早期退職のリスクが高まります。
理論年収はあくまで年収の理論値であり、実年収とは異なります。
たとえば会社の経営状況や本人の成績によって、貰える賞与の額や手当に変動があるケースは少なくありません。
また理論年収には社会保険料や税金も含まれています。理論年収に0.8をかけると実際の年収に近い金額を算出することができます。
人材紹介会社と求職者、求人者の3者にとって満足度の高い転職活動になるように、給与を表す言葉の違いを正しく理解し、認識の齟齬が生まれないようにしましょう。
求人者(企業)にとっては、人材紹介会社経由で採用した人材の早期退職は大きなリスクです。採用にかけたコストを回収する前に退職してしまうと、損失が大きいためです。
よって多くの人材紹介会社は、早期退職が発生した際に紹介手数料の一部を返金する返還金規定を設けています。
保証期間と料率の一例は、以下の通りです。
ただし、返還金規定の保証期間・料率は、人材紹介会社によって様々です。
またヘッドハンティングなど着手金が必要な案件の場合、早期退職が発生した場合にも、着手金の返金は行われないことが多いため注意してください。
ここまで人材紹介会社の手数料相場などについて、解説してきました。
人材紹介会社経由の採用のコストパフォーマンスについて、他の採用手法との比較もしてみましょう。
以下の表に、他の手法との比較をまとめました。
求人媒体への案件掲載やダイレクトリクルーティング、転職フェアなど一般的な採用手法は記載した料金に加え、自社の採用部門の人的コストがかかる点にも留意してください。
採用コストの先行投資を抑えたい企業や、採用人数が少ない企業の場合、人材紹介会社経由の採用を積極的に検討する価値があるでしょう。
手法 | 概要 | 料金 |
人材紹介 | 人材紹介会社経由の成果報酬型の紹介 | 採用人材の理論年収の30%~35% |
ハローワーク | 公的機関での求人掲載 | 無料 |
求人媒体 | 紙媒体やWeb媒体への求人掲載 | 4週間1クールの掲載で20万円〜150万円前後 |
ダイレクトリクルーティング | SNSなどを利用して企業が直接候補者にアプローチする | 基本料金+採用課金で1名の採用につき平均60万〜80万円前後 |
アグリゲーションメディア | 求人情報特化型の検索エンジン | クリック課金(1クリック100円〜350円前後) |
転職フェア | 大規模会場で各社がブースを出展し、会社の理念や事業内容を伝えるフェア | 出展料(フェアの規模や地域によって異なる。1日30万円〜数百万円前後) |
最後に人材紹介会社の手数料の料率などについて、よくある質問をまとめました。
もっとも一般的な「登録型」のエージェントを運営しており、様々な求人案件を総合的に取り扱う場合は「理論年収の30%~35%」の範疇で設定すると良いでしょう。
ただし自社で取り扱う求人案件や、紹介可能な人材の品質によっても、料率の相場は大きく変わります。
サーチ型の人材紹介会社で重役クラスのヘッドハンティングにも対応する場合、上限である50%の料率を設定することもあります。
コスト優位性などを重視して、ベトナムやフィリピンなどの海外人材を扱う場合は相場よりも安い手数料を設定することもあります。
マッチングの手法や紹介する人材のキャリアや質による手数料の相場の違いは、より詳しくこちらの記事で解説しています。
人材紹介会社の手数料は「届出制手数料」が主流。届出制手数料では事前に厚生労働大臣に届出をした手数料の範囲内で、事業者が紹介料を受け取ることができるものです。
上限は理論年収の50%です。
つまり理論年収の50%までの範囲で、なおかつ事前に厚生労働大臣に届出がされている場合は、事業者がある程度自由に紹介手数料の料率を設定できます。
よって、全ての紹介会社が一律の手数料の料率を設定しているわけではありません。
細かな料率は、その会社の対応品質や経営状況にもよって異なるでしょう。
たとえば一般的なエージェントであれば、理論年収の30%~35%が相場です。この「5%の差異」は、市場全体から見れば決して珍しいものではなく許容範囲であると言えます。
人材紹介会社に支払う紹介手数料の相場や、返還金の仕組みを解説しました。
人材紹介会社の「理論年収の30%~35%」という手数料は、決して安い金額ではありません。しかし初期費用が発生せず、なおかつ自社の採用部門の人的コストを抑えつつ優秀な人材を採用できる点は大きなメリットです。
また理論年収の30%~35%という数値は、1件のマッチングに成功すると100万円以上の見込み売り上げに繋がりやすいです。これから人材紹介会社の起業・開業を検討している方にとっても、魅力的な市場と言えるのではないでしょうか。
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