

人材紹介会社の担当者は、しばしば「5年後~10年後に経営の中核を担うような人材」を求める企業の採用コンサルティングを行うこともあるでしょう。
しかし5年~10年の時間が流れると、社会は大きく変わります。たとえば2020年ごろから実用化が始まった5Gは、従来の4G回線の100倍の速度があると言われ、2時間の映画を数秒でダウンロード可能。
まだ5Gスマホは普及が始まりだしたばかりですが、多くの人に行き渡ればAIやビッグデータが個人の生活レベルでも活用が一層進むでしょう。
つまり、採用コンサルティング時には「いまいまのビジネススキル」を要件に入れこむだけでなく、その人物の「変化に対する柔軟性」や、そもそもの環境要因も考慮に入れる必要があります。社会が変わる中での「求められる人材の要件」を解説します。
前述の通り、社会が変わると「求められる人材」の像にも影響があります。たとえば4Gから5Gで通信速度に100倍の違いが生じると、4Gの時代に人間に求められる「情報処理能力」と5Gの時代のそれでは性質が違います。
極端な例ではありますが、4Gの時代に「情報処理能力に優れる人材」だったとしても5Gの時代に対応できなければ「5Gネイティブ世代の100分の1のデータ処理速度しかない人材」になり得ます。
こうした時代の変化の激しさは「VUCA」とも表現されます。不安定(Volatility)、不確実性が高い(Uncertainty)、複雑(Complexity)、 曖昧模糊(Ambiguity)の頭文字を並べた語句です。
不確実性が高い時代の中では、その人物が「確固たるスキルがあるかどうか」というよりは、「必要に応じて学び直しを自主的に進められる人物」が求められると言えるでしょう。
これからの時代に求められる人材と、求められない人材の最大の違いは「変化への柔軟性」と言えるでしょう。人材の側にはたとえば業務外に自習をしたり、時間/金銭の余裕次第では夜間の大学院や専門学校に通い直すなど「学習意欲」が重要。紹介会社の側には、そうした人材らの「頭の柔らかさ」を評価する心がけが必要でしょう。
繰り返しになりますが、求められる人材の絶対的な要件は「変化への柔軟性」です。
変化への柔軟性の例として、システム開発を題材に考えてみましょう。
VUCA時代以前には、システム開発はウォーターフォール(仕様と使用する技術を事前に全て仕様書にまとめきり、その通りに開発を進めていくやり方)で進めるのが一般的でした。ウォーターフォールで開発を進めるには、ライブラリや言語の仕様アップデートが頻繁だとリスクが大きいです。よって「刈れた技術」が採用されがちです。
一方で、4Gから5Gへの変化や、ビッグデータ技術やブロックチェーンの広まりなどテクノロジーは進んでいます。
こうした時代に求められる開発手法は、ウォーターフォールではなく、むしろプロジェクトを小さな単位に切り分けて、小さな単位からでもどんどん新しい技術を盛り込んで機能単位でPDCAサイクルを回していけるものです。
こうした開発手法はアジャイル開発と呼ばれます。
当然、新しい技術を小さくても取り入れるには自習も必要で、失敗も増えるでしょう。「学習し、トライ&エラーを繰り返しながら新しいことに挑戦する」姿勢こそが重要です。
求められない人材は「ウォーターフォールでしか仕事ができない」人材です。システム開発で言えば、VUCA時代に「すべての仕様を固め切る」のは難しいもので、あとから仕様が変わることも増えます。
ウォーターフォールですべての仕様が固まるのを待たなくては、業務ができない人材には、採用サイドから見ればやはり「自習」などの意欲も期待しづらいでしょう。
冒頭でも書いた通り、人材紹介会社の担当者は「5年先の経営の中核」などを担う人材の紹介を依頼されることもあるでしょう。
そうした採用課題に対しては、紹介会社の側にも「VUCA時代」を見越した人材の見極めが求められます。
おすすめなのは、自社で抱えているタレントプールの人材に対して仮説思考を問うこと。
たとえばWebディレクターの紹介をするとしたら、Webディレクション歴がある人材に「たとえばAというサイトで、新たに◎◎をKPIとして設定する場合、どのような改善策を練りいくら程度の予算を策定し、いつまでの達成を目指しますか」といった出題を実施。
人材の回答が正確か否かは問わず、限られた出題材料で仮説思考を行い、説得力のある人材だけをクライアントに紹介。クライアントには「VUCA時代に必要な、少ない材料から仮説を立てて、アクションプランを策定できる人材」と強くその人材を推すと良いでしょう。
これからの時代に求められる人材/求められない人材の違いを解説しました。VUCA時代にもっとも必要な「根本的な能力」は仮説思考です。人材紹介会社の担当者は、人材との面談時にこれまでの実績やいまいまの保有スキルにとらわれすぎず、その人材の「仮説思考の能力」にも気を配ることをおすすめします。
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