

2021年3月2日、厚生労働省から「一般職業紹介状況(令和3年1月分)」が発表。2021年1月の有効求人倍率が公表されました。
2021年1月の有効求人倍率は、2020年11月以来の改善傾向にあります。
一方で緊急事態宣言の影響もあり、就職活動自体を控え「求職者の母数全体が減っている」という見方もあり、引き続き市場の動向を慎重に見極める必要があるでしょう。
今回は、2021年1月の最新数値を1つ1つ紐解いていきます。
2021年1月の有効求人倍率は、1.1倍。前月比で0.05ポイント上昇し、2020年11月以来2か月ぶりに改善。
2020年6月(1.12倍)以来の水準となり、有効求人倍率は数値上、回復傾向にあります。
2020年12月から新型コロナウイルスの感染が再拡大。求人の減少傾向が全国的に続く中「有効求人倍率が回復している」ことに、疑問を持つ方も多いでしょう。
有効求人倍率の回復の理由を分析するには、まず「有効求人倍率」の定義を知る必要があります。
有効求人倍率は、「求職者1人に対して、企業から何件の求人があるか」を示す数値です。
国内の景気が上昇傾向にあり、企業の採用意欲が活性化すると、求人数が増えるため有効求人倍率は上昇します。
一方で、そもそも「求職者が仕事を探さなくなる」と求職者の母数全体が少なくなります。よって求人数が減少傾向にあったとしても、有効求人倍率は上昇します。
2021年1月の有効求人倍率は1.1倍に上昇してはいるものの、外出自粛の影響から就職活動そのものを控えた個人が少なからず存在している可能性が高いです。
「求人数が減少傾向にあっても、有効求人倍率は上昇」するケースがあると書きました。2021年1月の有効求人数は、前月に比べ0.1%減。有効求職者は0.7%減。2020年12月と比較すると、求人数は微減傾向です。
前年同月比で見ると、落ち幅はより顕著です。
2021年1月の有効求人数は211万2352人。前年同月比で見ると、45万4173人減少。パーセンテージにして、17.7%減少しています。
こうしたデータから見ると、有効求人倍率の回復は「企業の採用意欲が刺激され、求人数が増えたから」とは言えないことが分かります。
2021年1月の、パートやアルバイトを除いた正社員有効求人倍率は0.79倍です。2020年1月からの正社員有効求人倍率の推移は以下の通りです。
・2020年1月 1.07倍
・2020年2月 1.05倍
・2020年3月 1.03倍
・2020年4月 0.98倍
・2020年5月 0.90倍
・2020年6月 0.84倍
・2020年7月 0.81倍
・2020年8月 0.78倍
・2020年9月 0.78倍
・2020年10月 0.79倍
・2020年11月 0.80倍
・2020年12月 0.81倍
有効求人倍率が1.1倍に上昇し、2020年6月以来の水準を回復する一方で正社員有効求人倍率は低い水準のままほぼ横ばい。
先行きの不透明感は強いままと言えるでしょう。
業種別に有効求人倍率を前年同月比で比較すると、宿泊業・飲食サービス業(37.5%減)、生活関連サービス業・娯楽業(26.2%減)などと宿泊業や飲食業、イベント関連業などの苦境が長きにわたって続いていることが分かります。
一方で、有効求人倍率を高い水準でキープしているのが「建設業」です。前年同月比で、建設業は11.9%増。コロナ禍でも採用ニーズが堅調です。
建設業の採用ニーズが強い理由には「正社員労働者の不足感が強い」ことがあげられます。
ヒューマンタッチが運営するヒューマンタッチ総研の調べ(2020年11月調査)では、産業別正社員などの過不足判断DIで、もっとも不足感が強かった業種が建設業(48ポイント)。
従来より労働力不足が深刻化している中、新型コロナウイルスの影響で工事の進捗の遅れなども発生。
株式会社コプロ・ホールディングスの調査では、新型コロナウイルスによって「工事への影響があった」と回答した事業者は43.8%。そのうち、41.3%で「工事の進捗の遅れ」を大きな影響としてあげています。
工事の進捗の遅れを、新規採用による人員増加でカバーする動きも出始めているものと考えられます。
有効求人倍率の最新数値について紹介しました。2020年6月以来の水準を回復するも、有効求人倍率の回復の理由は「求人数の増加」によるものではない可能性が現時点では高いです。
2月以降の見通しについて、慎重な姿勢でウォッチし続けることが必要でしょう。
※当サイトに掲載されている記事や情報に関しては、正確性や確実性、安全性、効果や効能などを保証するものではございません。
編集部では、人材紹介に関する様々な情報を無料で提供しています。お気軽にご登録ください!