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市場動向
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ウィズコロナ時代の人材業界の今後・将来性を解説!有効求人倍率推移や需要拡大が見込まれる業界も

    コロナ渦で、長らく「売り手市場」とされてきた人材業界にも大きな影響が及んでいます。今回は新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえた上での、人材業界の動向について考察していきます

    2020年9月に厚生労働省が発表した、令和2年7月分有効求人倍率は前月比-0.03ポイント低下。コロナ禍で、長らく「売り手市場」とされてきた人材業界にも大きな影響が及んでいます。(※1)

    新型コロナウイルス感染拡大の影響は「時限的」であり、原因と対処法が明確であることから経済回復も早い段階で達成されるとの見方もあります。

    とはいえ多少の経済回復があったとしてもコロナ前の水準に、各社の採用意欲、ひいては景気動向が「完全に回復するか」「回復するとして、いつになれば戻るのか」は不透明でもあります。

    今回は新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえた上での、人材業界の動向について考察していきます

    【コロナ禍編】人材業界の今後

    covid19

    まずは新型コロナウイルスの感染拡大が人材業界に与えた影響と、今後について解説していきます。

    ウィズコロナ時代の人材業界の市況はどうなる?

    office

    新型コロナウイルスの影響で、有効求人倍率は低下傾向にあります。

    一方で「ジョブ型雇用」への企業サイドの関心の高まりや、医療・物流分野では派遣求人の需要が増加するなど、採用関連の新たな動きも出てきています。

    1つ1つ、ウィズコロナ時代の人材業界の動きを見ていきましょう。

    有効求人倍率の低下

    書類

    冒頭部でも言及した通り、コロナ禍の有効求人倍率は低下傾向にあります。令和2年7月分有効求人倍率は0.81倍。

    前月以前からの正社員有効求人倍率の推移は以下の通りです。

    • 2020年1月 1.07倍
    • 2020年2月 1.05倍
    • 2020年3月 1.03倍
    • 2020年4月 0.98倍
    • 2020年5月 0.90倍
    • 2020年6月 0.84倍
    • 2020年7月 0.81倍

    有効求人倍率の低下の理由は、経済の落ち込みです。2020年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は年率換算で実質27.8%減。

    リーマンショック時の年率17.8%減を超える落ち込みであり、新型コロナウイルスが日本経済に与えるダメージは戦後最大級に大きなものであると言えるでしょう。

    リーマンショックは2008年9月に発生しましたが、前年まで有効求人倍率が1.00倍を超えていたのに対し、2009 年8月に 0.42 倍まで悪化。その後に回復傾向に転じるものの、1倍を超えたのは2013 年 11 月。

    回復までに4年の月日を用意しました。

    仮にコロナショックからの回復に、リーマンショック時と同等の時間を要する場合、有効求人倍率の回復には数年かかる可能性があります。

    ジョブ型雇用の増加

    job

    コロナ禍で、社員の雇い方を従来の日本型雇用から、職務を明確にした上で経験者を中心に採用する「ジョブ型雇用」へと切り替える企業が急増しています。

    国内では日立製作所や資生堂が管理職、一般社員に導入予定のほか、KDDIでも新卒採用に導入予定。

    ジョブ型雇用が急速な広がりを見せている背景には、テレワークの普及があります。

    新型コロナの感染拡大と緊急事態宣言により、テレワークを導入する企業が急増。

    しかし、従来の日本型雇用では職務知識がない学生を一括採用し、多様な経験をさせることで育成します。裏を返せば、多くの企業で一人一人の社員の担当する職務が明確に言語化されていないということでもあり、上司が部下を管理しづらいテレワークの弊害も指摘されていました。

    ジョブ型雇用であればやるべき仕事内容が事前に言語化されているため、仕事を滞りなく進めている限りは上司が部下を細かく管理する必要はありません。よってジョブ型雇用とテレワークの相性は良好です。

    一方、ジョブ型雇用には「やるべき仕事」がなくなった社員が解雇されやすいというデメリットがあります。

    とはいえジョブ型雇用が日本よりも浸透している欧米では、仕事がなくなった社員が解雇されるのは一般的なことでもあります。

    日本でジョブ型雇用をいち早く推進する日立製作所は「2024年までに制度の定着を目指す」としています。(※2)

    ウィズコロナ時代の転職市場は、ジョブ型雇用の求人案件が中心になる可能性も考えられるでしょう。

    新卒売り手市場には陰り

    student

    就職情報会社ディスコが7月上旬に行った「2021年卒・新卒採用に関する企業調査-中間調査」(調査期間:7月1日〜9日、有効回答社数1263社)によると、採用市場について「売り手市場だ」と考える企業は全体の4割。(※3)

    2020年卒の調査では全体の9割が「売り手市場」と答えていたことから、企業側の採用市場への見方が急変したことを示しています。

    2022年卒の新卒採用については、2021年卒並みの採用を予定する企業が過半数。一方でおよそ4割の企業が「未定」と回答。

    新卒売り手市場に陰りが出始めていると言えるでしょう。

    医療・物流の求人の需要が増加

    medical

    新型コロナウイルスのポジティブな影響としては、医療・物流の求人需要が増加していることが挙げられます。

    感染拡大を受けて多くの地域の病院が人手不足に陥ったことで医療関係の求人が増加したほか、ステイホーム期間に通販を活用する家庭が増えたことから物流の求人が伸びています。

    人材業界の中長期的な展望・将来性

    finance

    ここまでは人材業界のコロナ禍での短期的な影響について見てきました。続いて、コロナ禍を踏まえた上での業界全体の中長期的な展望を見ていきます。

    再就職支援業への需要拡大が見込まれる

    人材ビジネスは大きく分けて「人材紹介業」「人材派遣業」「再就職支援業」の3種に分かれます。

    このうち人材紹介・人材派遣は好況時に市場が拡大しやすいです。一方で好況時は再就職の難易度が下がることから、再就職支援業は縮小する傾向にあります。

    再就職支援業は、企業が早期・希望退職者の募集を行うタイミングなどで需要が発生します。

    今後急速な業績の悪化に伴い、早期退職者募集を行う企業の増加が予測されます。

    また中長期的には、ジョブ型雇用が広がることで解雇の増加も予見されます。個人が再就職支援を活用しやすい環境作りの重要性は高く、市場の拡大が見込まれます。

    人口ピラミッドの変化

    人材業界は「人の労働力」を扱う市場であることから、少子高齢化の影響をダイレクトに受ける業界です。

    みずほ総合研究所「日本の人口と労働力人口の見直し」によると、2016年の労働人口は6648万人。2030年には5880万人、2050年には4640万人へと縮小していくと予測されています。(※4)

    労働力人口の減少は人材業界にとっても免れることはできない課題です。

    国内市場の縮小を「非労働力人口を労働力人口に転換するための施策を行う」「グローバル展開し、海外市場の売上でカバーする」「HRテックによる業務効率化で補う」などの経営戦略が求められることになるでしょう。

    HRテックの広がり

    人材紹介管理ツールとは

    HRテックとは、HR(Human Resources)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた用語。

    採用やタレント・マネジメント、評価など人事業務にビッグデータ解析やAI(人工知能)、クラウドを導入し、業務効率化を実現するものです。

    労働力人口が減少するに伴い「働く場所や雇用形態は自由で良いので、優秀な人材を探すべき」とする企業サイドの動きは広がっていくでしょう。

    優秀な人材を確保するための施策の一環として、副業の解禁や柔軟性の高い時短勤務を取り入れる動きは実際に広がっており、リモートワークがコロナ以後にも定着する可能性も高いです。

    副業・兼業やリモートワークを前提とした採用戦略を立てた上で、たとえば「オンライン面接でも採用のミスマッチが起きないように、その人材に対する第三者の評価を確認できるリファレンスチェックツールを導入する」「人材が長く定着してくれるようにタレント・マネジメントシステムを導入し、オンラインでも適切な人材育成を実現する」などHRテックを活用した人事業務は広がっていくでしょう。

    法改正の影響

    大手人材紹介会社との違い

    働き方や雇用に関する法律は、法改正が続いています。

    以下に紹介する法律以外も、類似する分野の法改正が今後続く可能性もあります。1つ1つ見ていきましょう。

    同一労働同一賃金

    「同一労働同一賃金制度」とは政府の働き方改革の1つで、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差を禁止するものです。2020年4月1日から施行され、2021年からは中小企業でも導入されます。

    非正規労働者にとっては、待遇差の是正に繋がります。具体的には賃金に加え、福利厚生や教育訓練の機会などを新たに得られるようになります。

    一方、企業サイドにとっては人件費の高騰に繋がります。

    正規雇用労働者ではなく、非正規雇用労働者を雇うメリットが薄くなり、たとえば派遣切りに繋がるリスクも無いとは言えません。

    非正規雇用の労働者を多く雇う中小企業で、2021年以後にどのような動きが起きるのか注目です。

    高年齢者雇用安定法

    高年齢者雇用安定法とは、定年に関する法律です。高年齢者が少なくとも年金受給開始年齢までは働くことができる環境の整備を目的として施行されています。

    2013年の法改正では、定年年齢を65歳以下に定めている企業を対象に「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の引き上げ」「定年の廃止」のいずれかが求められました。

    2020年の法改正では、対象年齢がさらに引き上げられ「70歳までの雇用確保の努力義務」が課せられます。

    内閣府が発表した平成30年版高齢社会白書によれば、70~74歳の就業率は27.2%。

    働く意思を持つ70代の人口は多く、中長期的なスパンで見ると、60代〜70代の高齢者層を対象とした人材紹介会社が登場する可能性もあるでしょう。

    社会の変化に人材会社はどのように対応すべき?

     

    人材業界の今後を考える上で、最後に「社会の変化に人材会社はどのように対応すべきか」を考察していきます。

    高度人材の育成

    recruitment

    コロナ禍においてもハイクラス人材や、ITエンジニア職など専門性が高い売り手市場の業種は影響が軽微で、採用を継続している企業も多いです。

    人材紹介会社にとってはこういった人材は理論年収が高く、採用決定時の手数料収入も大きい貴重な存在でもあります。

    とはいえハイクラス人材は市場全体で見るとごく一部の層に過ぎず、転職への関心度が高い人材はより限られます。

    ポテンシャルが高い人材を育成し「ハイクラス人材」へと引き上げるような、育成関連の施策は検討の価値があるでしょう。

    グローバル対応

    外国人ターゲット 人材紹介

    中長期のスパンで見ると、国内は少子高齢化と労働人口の減少が避けられません。国内市場の縮小を見越したグローバル対応も検討の価値があるでしょう。

    たとえばHRテック関連では、2012年にリクルートが求人情報特化型検索エンジン「Indeed」を買収。

    ダイヤモンドオンラインの報道によると、リクルートの売上高の46%は既に海外事業。サービス展開国数は60カ国を超えています。(※5)

    人材紹介領域では、ミャンマーやベトナムの優秀な人材を対象に日本語教育を行なった上で日本企業に紹介をするというマッチングも広まっています。

    こうした海外アウトソーシングの動きも、社会の変化への対応策の1つとして考えられます。

    高齢者活用も視野に入れる

    先にも解説した通り、70代以降でも労働意欲が高い人材は多いです。50代以上など中高年の労働力を活用する方向で事業を検討するのも良いでしょう。

    まとめ

    新型コロナウイルスの感染拡大の影響を踏まえた上で、短期・中長期の2通りのスパンに分けて人材業界の今後を考察しました。

    コロナ以前の水準に回復するには、リーマンショックの前例を踏まえて考察すると数年程度の時間を要する可能性があります。

    短期的にはジョブ型雇用の推進などが続き、中長期のスパンでは人口ピラミッドの変化やHRテックの動向、法改正の影響を見極めながら事業を検討していく必要があるでしょう。

    (※1)厚生労働省「一般職業紹介状況(令和2年8月分)について」
    (※2)東京新聞「ジョブ型雇用、経団連は導入前向きだが人材育成仕組み不十分」
    (※3)NHK「新卒採用 「売り手市場」に陰り」
    (※4)みずほ総合研究所「少子高齢化で労働力人口は4割減」
    (※5)ダイアモンドオンライン「「何だ、その会社は」と思ったIndeedとリクルートが恋に落ちたワケ」

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