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事業戦略
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人材紹介業のM&A事例4選 – 人材紹介ビジネスを買収によって立ち上げるメリット

    人材紹介業を立ち上げる場合、人材紹介業の許認可をゼロから取得するのではなく、人材紹介会社をM&A(買収)するという方法もあります。

    初期投資額は大きくなるものの、許認可取得のステップを飛ばして、一定程度の規模の事業をスピーディーに展開できます。また全くの異業種からの参入の場合、キャリアコンサルティングのスキルがある人材をまとめて多数確保できるのもメリットです。

    今回は人材紹介業のM&A事例や、買収のメリットを解説します。

    人材紹介業のM&A(買収)とは?

    人材紹介業のM&Aは、自社の別事業とのシナジー効果などを目的に行われます。

    たとえば求人広告を手掛ける企業が人材紹介会社を買収することで、自社が持つ求人情報や求職者情報を横展開して紹介事業を運営することが可能となります。

    自社で許認可を取得するよりもスピーディーに事業を立ち上げられるケースがあるほか、買収先の人材紹介会社が持つ独自のネットワークなども包括的に手に入れられることがメリット。たとえば買収先の人材紹介会社が特定の地域で高い知名度を持っている場合、後発として同じ市場に参入するよりも「買収」の方が手堅く目当てのマーケットで存在感を発揮できることもあります。

    人材紹介業のM&A事例4選

    ここ10年ほどの間に行われた人材紹介会社のM&A事例を4つ、表にまとめました。参考にしてください。

    事例 時期 特徴 買収額
    テンプホールディングス株式会社による株式会社インテリジェンスホールディングスのM&A 2013年 「DODA」や「an」といった有名サービスを持つインテリジェンスを、総合人材サービスを手掛けるテンプホールディングスが買収。以後も同社は多くの人材関連事業者を買収 約510億円
    パソナグループによるNTTグループ人材会社のM&A 2017年 NTTグループの人材会社を買収することで、NTTの地方での高い知名度を生かした営業やNTTグループとの繋がりの強化を実現 約54億円
    じげんによるPCHホールディングスのM&A 2020年 介護・福祉・医療関連の派遣/紹介事業を手掛けるPCHホールディングスの買収によって、じげんの介護分野進出の足がかりとしている 約1億8000万円
    デザインワン・ジャパンによる昼jobのM&A 2020年 水商売などナイトワーク出身者に特化した紹介事業を手掛ける昼jobをM&Aすることで、独自性の高いマーケットに効率的に参入 非公表

    なお今回ご紹介した事例は、大きく分けて2パターンに分けられます。

    ・M&Aの実施前から人材業界で存在感を発揮していた事業者が、自社ブランドをより強固なものにするためにM&Aを行うケース
    ・「ニッチながら確実な需要が見込める市場」にスピーディーに参入するための先行投資としてM&Aを行うケース

    テンプホールディングスやパソナグループのM&Aは、前者に該当します。特にテンプホールディングスはインテリジェンス社以外にも多くの企業のM&Aを継続的に行っており、M&Aが同社の成長戦略の一環を担っています。

    じげんやデザインワン・ジャパンによるM&Aは後者を目的としたものと言えるでしょう。人材紹介業の紹介手数料の目安は、求職者の理論年収に対して30%ほど。年収300万円の人材のマッチングに成功すれば90万円~100万円の見込み売り上げが立ちます。収益性が高いビジネスモデルだからこそ、市場が多少ニッチなものだとしても積極的なM&Aを行う事業者も増えています。

    人材紹介業を買収によって立ち上げるメリット・デメリット

    メリット

    人材紹介業を買収によって立ち上げるメリットは、以下の通りです。

    ・取引網などの拡大による「規模の経済性」
    ・競合他社の吸収
    ・許認可取得にかかる時間を省略して、すぐに事業を立ち上げられる可能性が高い
    ・マッチング一件当たりの見込み売上高が大きい
    ・節税対策

    M&Aでは買収先企業の事業用資産や不動産だけでなく、取引網や事業ノウハウなども吸収できます。人材紹介業の場合、M&Aを行うことで取扱い求人数の拡大や、有名企業の非公開求人の獲得を実現できる可能性が高まります。立ち上げ初期に多くの事業者が苦戦する「法人営業コストの大きさ」に対する解決策の1つとなります。

    自社も人材紹介を既に行っており、競合他社を買収する場合「競合他社を吸収することによる優位性の確保」がメリットになります。競合他社同士でシェアの取り合いが起きると、市場は次第に価格競争に突入し、市場全体が疲弊していきます。競合他社を買収することで、自社が市場を独占することができるようになります。

    許認可取得にかかる時間を省略できることや、売上高の大きさもメリット。また節税対策にもなります。

    デメリット

    最大のデメリットは「M&Aをしても許認可を引き継ぐことができるとは限らない」ことです。たとえばM&Aの成立後に売り手企業の重大な粉飾や法令違反が発見され、許認可が取り消された場合は引継ぎができません。自社で許認可を取り直す必要性が生じます。

    買い手・売り手ともに優良な事業者であれば、多くの場合は許認可の引継ぎが可能です。しかしM&Aでは未払い給与など簿外債務を引き継いでしまう可能性や、法令違反の発覚リスクなどもつきものです。

    M&Aを進める際は、自社の法務部や顧問弁護士とも相談を行い、債務や法令の面でも慎重にデューデリジェンスを進めましょう。

    買収ではなく「新規立ち上げ」を検討すべき?

    memo

    許認可を引き継げないケースもあることを踏まえると、買収ではなく「新規立ち上げ」を最初から検討すべきでは?と感じる方も多いでしょう。

    「M&Aを検討すべき」か「新規立ち上げを検討すべき」かは、事業者の特徴にもよります。

    人材紹介会社のM&Aを検討すべき事業者の特徴

    M&Aを積極的に検討すべき事業者の特徴は、以下の通りです。

    ・数千万円~1億円以上の買収予算を確保可能
    ・異業種から人材紹介業への参入を目指しており、CAやRAの育成に多額の予算を要することが予測される
    ・買収先企業が強みを持つ市場と自社の事業にシナジーがある

    テンプホールディングスやパソナグループのM&A事例に顕著なように、人材紹介業のM&Aでは数十億円~数百億円の資金が動くケースもあります。ベンチャー企業同士のM&Aでも数千万円~1億円レベルの資金が動くことが珍しくありません。

    買収予算を少額に収めたとしても、買収後も事業への投資を継続的に行う必要があります。自社のキャッシュフローに余裕が無い状態では、そもそもM&Aを検討するフェーズにはないでしょう。

    自社のキャッシュフローにある程度余裕があるのであれば、M&Aは積極的に検討すべき経営戦略です。自社事業とのシナジーによって事業が大きく育つ可能性があるほか、節税効果も見込めます。

    人材紹介会社の「新規立ち上げ」を検討すべき事業者の特徴

    新規立ち上げを検討すべき事業者の特徴は以下の通りです。

    ・スタートアップであり、M&Aにかけられる予算が潤沢ではない
    ・ターゲットとしているマーケットがニッチかつライバルが少ない
    ・起業家自身もCAやRAの経験があり、立ち上げ時点での多くの人材採用の必要性が薄い

    一言で言えば「小規模なスタートアップの場合は新規立ち上げを検討すべき」です。エンジェル投資家らから数千万円~数億円クラスの資金調達を既に実現している場合は例外として、小規模なスタートアップでは現実的に一定程度の規模の人材紹介会社の買収は難しいです。

    人材紹介会社は派遣会社などと比べ、少額の予算でも立ち上げできることがメリットです。立ち上げ段階でM&Aで無理をするよりは、小規模に事業を立ち上げて段々と規模を拡大していく方がおすすめです。

    人材紹介会社のM&Aについてよくある質問

    最後に人材紹介会社のM&Aについて、よくある質問をまとめました。

    派遣会社のM&Aと紹介事業のM&A、どちらを検討すべき?

    自社がM&Aにかけられる予算によります。

    自社が数億円~数十億円レベルの買収予算を確保できる場合は、派遣会社のM&Aが視野に入ります。派遣会社の利益率は1.2%程度が目安。10%の利益率を生んでいる派遣会社は国内に存在しないと言っても過言ではありません。

    派遣事業はこのように利益率が非常に低いことが特徴ですが、数億円~数十億円クラスのM&Aであればそれでも一定程度の「利益額」にはなります。派遣社員が稼働し続ければ毎月安定した収益が発生する点も魅力的でしょう。

    一方、人材紹介のM&Aはより少額でも成約するケースが多いです。派遣事業に比べて市場規模が小さいことや、ビジネスモデル自体が違うことが大きな要因でしょう。人材ビジネスとしては比較的M&Aしやすい業種に該当しますが、M&Aが成立すれば飛躍的に取扱い求人数を伸ばせる点などは大きなメリットでしょう。

    M&Aではなく「業務提携」をすれば十分では?

    買収対象の人材紹介会社のデューデリジェンスをする中で「自社で買収しなくとも、対象企業と提携すれば十分ではないか」と感じることもあるでしょう。

    この場合、買収対象の企業と提携して「自社が人材紹介事業をしたいのか」が大きな論点となります。たとえば対象企業と提携し求人案件や求職者情報を融通し合い、融通された求人案件に人材をマッチングさせて収益を得たいとします。この場合、自社も人材紹介事業の許認可取得が必要です。その手間を割くかどうかが論点になります。

    自社が許認可取得をしていない場合、どうしても許認可をゼロから得るか、人材紹介会社を買収するかの選択が必要となります。自社で確保できる予算なども検討しながら、どういった選択をすべきか検討しましょう。

    まとめ

    人材紹介事業の買収の目的やメリット、有名なM&A事例などを解説しました。自社で「人材紹介事業を立ち上げるか、M&Aするか」検討しているときはぜひ参考にしてください。

    M&Aによる売却のメリットはこちらの記事で詳しく解説されています。
    あわせてご確認ください

     

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