ITエンジニアが「人手不足」な理由 – 日本のITエンジニア人口と今後の不足見通し
日本のITエンジニアの人口は、2021年時点で「およそ122万人」で、総人口に対する比率としては0.97%。
実は日本のIT技術者数は、世界的に見て「少ない」わけではなく、ドイツやイギリスに相当する数のエンジニアが存在します。
しかし日本では、2030年には40万人~80万人のIT技術者の不足が予測されています。大きな理由の1つには「人口に対するIT技術者の比率」があります。
今回は日本のITエンジニア人口と今後の不足見通し、またITエンジニアというマーケットの「人材紹介目線」での魅力や課題を解説します。
日本のIT人材の人口は「およそ122万人」
日本のIT人材の人口は、ヒューマンリソシアによる国際労働機関(ILO)の公表データや各国の統計データの集計によると「およそ122万人」。アメリカや中国を大きく下回るものの、ドイツやイギリスを上回っています。
人口で大きく劣る中国やインド、またAppleやMeta、Googleといった大企業が発祥したアメリカに差を空けられていることは事実ですが「極端に少ない数」とまでは言えません。
日本のIT人材数は「世界4位」- 国内人口の0.97%
日本のIT人材数は「世界4位」で、総人口に対して0.97%の割合でIT技術者が存在している計算。しかし「地域別IT技術者の割合」で見ると、ヨーロッパ諸国に大きく劣っている傾向も見えてきます。
2020年の調査では、北ヨーロッパの地域別IT技術者の割合は人口に対して1.59%。アメリカのIT技術者の割合も、1.47%。
日本のIT技術者の割合が1%を切っていることから、「IT技術者の割合を高められる余地はまだ大きい」と言えます。
「著しくITエンジニアが不足している」とまでは数値上言えないものの、不足見込みが明らかであることと「増やせる余地が大きい」こと。また採用ニーズも大きな職種であることから、ITエンジニアの育成とマッチングは「人材ビジネス事業者」の参入余地がまだまだあると言えるでしょう。
IT人材の需要は2030年には164万人(予測)| 40万人~80万人不足見込み
経済産業省によると、IT人材の需要は2018年には109万人、2020年には129万人。そして、2030年には164万人(予測)に達すると見込まれています。
日本のIT技術者数は、2021年時点でおよそ122万人。2021年時点の数値のまま推移すると、42万人ほどの不足が見込まれます。
しかし、IT人材にはインターネット黎明期(90年代初頭)に社会人となったエンジニアが少なからず含まれることも忘れてはなりません。2030年にはインターネット黎明期のエンジニアが引退を迎える年齢となります。引退数に対し、エンジニアの供給数が足りない場合は最大で80万人程度不足するリスクもゼロではありません。
IT人材の需要が「世界第4位のエンジニア数」でもなお不足するのは何故?
世界第4位のIT技術者数を誇る日本で、なおIT人材が不足する理由は「大企業や官公庁のDX化(デジタルトランスフォーメーション)が進み、ITインフラの保持や改善にさらなる人手が必要なこと」がまず挙げられます。
また前述の通り、日本のIT業界を支えてきたインターネット黎明期のエンジニアが今後10年で一斉に引退していくことが見込まれることも大きいです。
プログラミング教育の普及などを通じて、今後10年で「エンジニアの供給数」をヨーロッパ諸国やアメリカ相当に高めていくことも大事でしょう。
IT人材が不足するとどんなデメリットがある?
IT人材が不足すると、情報セキュリティやITインフラ周りのリスクが企業や省庁で高まります。行政手続きのIT化や医薬品のオンライン購入など、IT化が望まれる領域が多い一方で「サイバー攻撃リスクが高い」場合、手続きのオンライン化を国が推進したり民間に許認可を与えることは難しいでしょう。
総じて「暮らしを便利にする」には、IT人材を十二分に確保することは大きな課題です。
IT人材不足を解消するために必要なことと「ネックになっていること」
IT人材不足を解消するために必要なことと「ネックになっていること」をそれぞれ紹介します。
女性SEの増加 | 労働環境の適正化も必要
Indeedの調査によると、チームや部署の男女比について男性が6割以上(女性が4割以下)と回答した割合は全体の7割越え。
また自身の性別によるデメリットを感じたことがある人は、男性25.9%、女性36.5%で女性の方が10.6ポイント高い結果に。
総じてIT技術職は「女性の割合が低く」、かつ「現場の女性が自身の性別によるデメリットを感じるケースが多い」と言えます。
女性が感じるデメリットには「昇進・昇格しにくい」「給料が低い・昇給しにくい」「実力で評価されにくい」といったものが挙げられ、男女の給与水準の差を小さくしたり、社内での評価基準の透明化といったことは「女性SEを増やす」ためにも重要と言えるでしょう。
フリーランサーやシニアエンジニアの活用 | 案件とのマッチング機会を与える
ITエンジニアは「フリーランス」の働き方との親和性が高い職種の1つです。
一方、IT業界で長く噂されてきた「35歳定年説」の影響もあり、フリーランスエンジニアは年齢を重ねるごとに案件の受注が難しくなる傾向も。
実際にはシニアエンジニアや、年齢が高めのフリーランスは十分な技術力を持つにも関わらず、案件とのマッチング機会が十分ではないということです。
そのため「シニアエンジニアらに案件とのマッチング機会を与える」ことの重要性も高いでしょう。代表的なフリーランスエンジニア向けエージェントには「レバテックフリーランス」「プロエンジニア」などが挙げられます。
ITエンジニアの「人材紹介」の可能性
最後に、ITエンジニアの「人材紹介」の可能性について解説します。
ITエンジニアを積極採用している企業の例
昨今、多くの企業でDX化(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいることから非IT企業等でもエンジニアの採用ニーズが高まっています。
典型的な例は「コンサルティング会社」。アクセンチュアなどコンサルティング企業が、経営コンサルティングからDX化などを一気通貫で提案し、開発も受注するケースが増加。そのためコンサルティング会社で、DX化に関連する技術選定や見積もり、PMが可能な人材へのニーズが増しています。
こうした上流工程が担当可能なシニアや、30代~40代エンジニアへのニーズは今後も安定的でしょう。
ITエンジニアはハイクラス人材紹介の「主役」
ITエンジニアはハイクラス人材紹介の「主役」でもあります。採用ニーズが高く専門性も高い職種のため、理論年収も高い傾向。年収1000万円を超えるエンジニアも決して珍しい存在ではありません。
そのため、ハイクラス転職サイト等も多くのエンジニア職の案件を掲載しています。マッチングに成功すれば大きな利益が見込める反面、限られたパイに対して「レッドオーシャンになりつつある」とも言えます。
組み込み開発の需要も大きい
Webアプリケーションやゲーム開発の陰に隠れがちですが、「組み込み開発」の需要も大きいです。
興味深い事例の1つが、パチンコ機を中心とする「遊技機開発」のエンジニア。ムービー演出や確率シミュレーション等を担当します。
パチンコ業界は20兆円産業で、IT業界の1.6倍の市場規模を誇ります。また遊技機開発はプログラミング知識とハード知識が求められるため、専門性が高い分野。市場規模の大きさも相まって、今後、採用ニーズのさらなる拡大が見込めるでしょう。
未経験者に研修や講座を提供したうえで紹介するビジネスモデルも
プログラミング未経験者に、一定期間の研修や講座を提供したうえで紹介するビジネスモデルも広まっています。代表的な例は「DMM WEBCAMP」「テックキャンプ」等が挙げられます。
フリーターや第二新卒、また「30代での異業種転職」には一定のニーズがあることに加え、受講生からは講座代金、紹介先企業からは紹介手数料を受け取る「利益が2本柱」のモデルであることが特長。
こうしたモデルも、今後定番となるでしょう。
まとめ
ITエンジニアの人口数や、総人口に対する割合、不足する理由や「人材紹介マーケットにおける将来性」などを解説しました。
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