AIの台頭によって人材紹介はどう変わるのか
2015年の年末に野村総合研究所がオックスフォード大学との共同研究論文にて、10~20年以内に日本国内の仕事の49%がAIによって代替されるという衝撃の発表が公開されました。たった20年以内に、今日本にある仕事の半分近くがなくなってしまうとのことです。
この発表を受けて、人材紹介事業者は2つの意味で恐怖を覚えた方もいるかもしれません。1つは職業を扱うプロフェッショナルとして、対象とする職業が減る可能性があること、もう1つは人材紹介事業自体が、AIによって代替される可能性があるという部分です。
本記事では、AIの台頭によって、人材紹介にどのような変化があるのかについて考察している記事しています。
AIができること、得意なこと
AIができることや得意なことをやっていると、数年後に業務を代替される可能性が高くなってしまいます。では人材紹介業において、AIが得意な業務は何なのでしょうか。
AIは、単純作業やデータ処理、データの関連付けにおいては、圧倒的な処理速度を誇ります。いくら勉強して努力しようが、人間に勝ち目はありません。実際に将棋の世界ではプロの人間にAIが勝利してニュースになっていますよね。
人材紹介に置き換えると、過去の実績データや、世の中にある転職関連のデータを使ったマッチング作業は、AIの方が高スピードで正確に処理することができます。つまり現在、世の中にある情報を使った表面的なマッチングは、人間が行わない方が低コストで正確に、そして高速に行うことができるようになります。
このマッチングという作業においては、人間が介在する価値はなくなってしまうでしょう。では人材紹介事業において、人間が介在する価値がある部分は、どこなのでしょうか。
AIができないこと、不得意なこと
まず1つ目は、ないものを生み出す力である「創造性」が挙げられます。つまりAIは、今ある情報を使って、マッチングする作業は得意ですが、データ以外の要素を根拠に何かを生み出したり、一見すると関連性がない事柄同士を紐付けて何かを生み出すことはできません。また、プラスアルファの情報を人間から引き出す力や、コミュニケーションにおける人間特有の行間(表情や謙遜など)を読み取る力もありません。つまり、プラスアルファの情報を引き出すことにおいては、AIにはできない価値を生み出すことができます。
そして2つ目は、対人関係における定性的なコミュニケーションです。「信頼関係」を構築したり、「感情」を共有したり、「背中」を押したりすることは、AIには難しいです。また「データを処理する」という行為においてAIの正確性を信頼することはありそうですが、AIが提案された求人やキャリアプランを100%信頼することはなさそうですよね。人は意思決定の際には、データによる事実だけでなく、提案者との関係性やストーリーなどの定性的な情報も重視するからです。
このように、対人関係において、求職者や人事から出てくる情報を鵜呑みにするのではなく、更に深い情報を引き出すヒアリング力や、データを決まった処理ルール以外の解釈で、臨機応変に処理する部分、そして時にはロジックを超えた何かで背中を押す(本人も分かっているが、一歩を踏み出す勇気が出ない時など)部分にこそ、人間が介在する価値があるのです。
AI時代に備えて、今からできること
求人企業からの情報と求職者からの情報をそのまま引き出して、そのままマッチングする行為、よく表面的なマッチングと業界で呼ばれている行為は、間違いなくAIが代替していきます。圧倒的に低コストで、高スピード、そして高精度なマッチングが実現できるからです。
つまり、今から紹介事業者たちができることは1つしかありません。それは、今ある情報だけでは導き出せない選択肢を、求人企業、求職者双方に生み出すことに時間を使うことです。それは深いヒアリングかもしれませんし、それぞれとの信頼関係の構築かもしれません。またはロジックを超えた感情同士のぶつかり合いから生まれる、新たな選択肢かもしれません。これらは、AIの本格普及がこれからというフェーズである今からでもできることです。
まとめ
AIが台頭してきたとしても、人材紹介事業の全てがなくなる可能性は低いはずです。データに基づいたレコメンドなど、AIがやったほうが精度が高いことをAIに任せ、対人関係の業務など人間の方が得意なことを人間がやるというように、AIと人間が業務を分担してこなすようになるでしょう。
そのような分業体制の時代が来た時に、現時点でAIができる作業を繰り返している事業者は、AIが仕事を奪ってしまう可能性が高いです。つまり、今から人間にしかできない付加価値を生み出す業務、あなたしかできない業務に割く時間を最大化できるように、業務を見直す必要があるかもしれません。
「いつかはAIに代替されそうで、今削減すべき業務は何ですか?」
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