

人材紹介業を運営する上で、不可欠な書類が求人企業と交わす「基本契約書」。人材紹介会社と求人企業は、基本契約書を締結することで、採用決定時の成果報酬の料率や支払タイミング、早期退職時の返金規定などを決定します。今回は基本契約書について、詳しく解説します。
人材紹介事業の運営には、主に以下のような書類が必要となります。事業運営上、必要となる書類はあらかじめ準備しておきましょう。
・基本契約書
・求人票
・内定通知書
各書類の内容は各社大きな差はないことが多く、必須項目や不可欠な項目以外は、必要に応じて企業ごとにカスタマイズが可能です。
人材紹介の契約書では、
・報酬の料率
・秘密保持義務
・個人情報管理
・トラブル発生時の損害賠償や違約金
などについて取り決めを行います。
インターネット上に公開されている契約書のフォーマットを使用する際は、使用前に自社の顧問弁護士と「該当の契約書フォーマットを使用して、問題はないか」を相談するようにしましょう。事業リスクは、可能な限り未然に防ぐことがおすすめです。特に中長期的に「株式上場を目指す」などの目標がある場合、事業の法的観点の危険性は、上場リスクに直結します。ダウンロードした書類を精読せず「そのまま使う」ことは避けてください。
なお人材紹介の契約書を作成し、企業と締結する際には
・求職者が起こすトラブル
・求人企業が起こすトラブル
をそれぞれ想定し、そのトラブルが実際に発生した際の責任範囲や返金規定なども盛り込んでおくと良いでしょう。トラブル例をいくつかご紹介します。
まずは求職者が起こす場合がある、トラブルの例を紹介します。
・経歴詐称
求職者が学歴や職歴を偽って応募し、入社後に発覚するケースです。この場合、求人企業は人材紹介会社に対して返金を求めることがあります。契約書には、経歴詐称が発覚した場合の責任や返金規定を明記しておくと良いでしょう。
・早期退職
求人企業が紹介した人材が入社後、すぐに退職することもよくあるトラブルです。契約書に早期退職時の返金規定を設けておくことで、企業との信頼関係を維持しやすくなります。一般的には、入社後90日以内の退職に対しては手数料の一部を返金する規定を設けることがあります。
なお人材紹介の契約書は一般的に、人材紹介会社と求人企業の間で交わされます。つまり契約書の文面や要項で対策できる内容は「求人企業からクレームが発生した際の責任範囲や返金規定などを定めること」です。悪質な経歴詐称
や悪質な早期退職が発生した際に、その求職者を相手に訴訟などが可能か、といった点については自社の顧問弁護士にも相談するとよいでしょう。
続いて求人企業側が起こす場合がある、トラブルの例を紹介します。
・手数料未払い
求人企業が紹介手数料を支払わないケースもあります。契約書には支払い条件や期限を明確に記載し、未払い時の対応策(例えば法的手段)についても触れておくべきです。
ここまでに解説してきた内容を踏まえ、最後に「作成した人材紹介の契約書の確認ポイントを紹介します。
採用決定時に発生する紹介手数料の金額が、具体的に定められているか確認しましょう。人材紹介業の手数料相場は、求職者の理論年収の30%〜35%程度(ただし、未経験求人は50万円前後の固定額)です。
人材紹介業の手数料は「届出手数料制」を採用しており、料率は50%を上限に設定可能です。ただし、一般的な相場である30%〜35%を著しく超える手数料を設定する場合は「届出時に合理的な説明が必要」。求人企業との契約時にも、モラルとしてやはり合理的な説明が必要でしょう。紹介手数料の料率や金額について、双方互いに納得した状態で契約を結びましょう。
一般的には、紹介手数料の発生タイミングは「採用決定時」。支払タイミングは「入社日」を起点に翌月末までとするのが一般的です。ただしクライアント企業の中には、締め日の関係で「毎月20日締めの、翌々月末払い」を希望する会社もあります。求人企業の希望に合わせて柔軟に支払タイミングも変更するのか、それとも一律で翌月末とするのかは事前にすり合わせておきましょう。
人材紹介業の手数料相場は、採用された人材の理論年収の30%〜35%(ただし、未経験求人は50万円前後の固定額)。理論年収300万円の人材の採用が決定した場合、紹介手数料はおよそ100万円。年収900万円の人材の場合、紹介手数料は300万円近くとなります。つまり、求人企業にとって人材紹介会社に支払う手数料は決して安いものではありません。中には手数料の支払いを拒み、紹介された人材と直接接触し、契約を交わそうとする悪質な企業も出てくるでしょう。こうした行為に対する罰則規定も、契約書に盛り込んでおきましょう。人材紹介会社を交わさず、直接契約した場合にも手数料相当の罰金が発生すると定めるケースが多いです。
紹介した人材が入社後に早期退職した場合、紹介手数料の一部を返金する規定を定めることが多いです。返金規定の対象となる期間は、入社後1ヶ月〜3ヶ月以内、もしくは6ヶ月以内程度が主流です。返金額の料率は事業者や案件によって様々ですが、一例としては以下の通り。
・入社後1ヶ月(30日)未満……手数料の80~100%の返金
・入社後1ヶ月(30日)〜3ヶ月(90日)以内……手数料の50%程度の返金
在籍期間が長いほど低くなるように設定されます。
また早期退職時には「返金」ではなく「フリーリプレイスメント」によって保証を行うケースもあります。フリーリプレイスメントとは、人材の早期退職時に無償で新たな候補者を紹介するもの。求人企業は早期退職の保証として返金を求めるケースが多いですが、人材の穴埋めを希望するケースもあるため事前に契約書で対応策を定めておくことをお勧めします。
求職者のオーナーシップとは、人材紹介会社が求職者を求人企業に紹介した場合、一定の期間にわたって「その求職者に対する紹介手数料を請求する権利オーナーシップ」を保有することを明記するものです。ある企業に人材紹介会社が人材を紹介したものの、その時点では採用決定には至らなかったとします。この場合、紹介した人材が別のルートで再度同じ企業の求人に応募し、採用に至るケースがあり得ます。上の状況でも権利の保有期間内であれば、契約書で定めた料率の紹介手数料が発生するのが「オーナーシップ」です。オーナーシップの有効期間は、人材を紹介してから12ヶ月程度とするのが一般的です。
今回は人材紹介業の契約書の記載ポイントや契約書の確認ポイントを解説しました。契約書の文言にきちんと目を通し、契約内容を明確にすることで多くのリスクを未然に低下させることができます。
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