

「人材紹介の契約書に、収入印紙は貼る必要があるの?」と悩んでいませんか。
人材紹介の契約書は、主に人材紹介会社と求人企業が契約を交わす際の書類を指します。
スタートアップなど小規模人材紹介会社の担当者の方や、人材紹介会社の利用経験が浅い人事担当の方にとって「収入印紙の有無」は見落としがちなポイントで、どのように対応すべきか分からないというケースも多いのではないでしょうか。
今回は、人材紹介の契約書の印紙の有無について1つ1つ解説していきます。
結論から言えば「人材紹介の契約書に、収入印紙は不要」です。
収入印紙が不要な理由を解説します。
収入印紙とは財務省が発行する証票のことです。証票の発行目的は租税・手数料などの徴収です。
国税庁が定める収入印紙が必要な文書に、収入印紙を貼付し、消印をすることで国庫に税金を納税したものとして扱われます。
収入印紙による課税の理由は「経済的利益が大きいと推定される取引を対象に、比較的軽微な課税を行うことで国の税収を確保すること」にあります。
平成17年3月15日の国会答弁で、小泉純一郎首相(当時)は印紙税の目的について以下のように答弁しています。
印紙税は、経済取引に伴い作成される文書の背後には経済的利益があると推定されること及び文書を作成することによって取引事実が明確化し法律関係が安定化することに着目して広範な文書に軽度の負担を求める文書課税であり、いわゆる流通税の一つとして、現在においても、我が国の税体系及び税収面において基幹税目を補完する重要な役割を果たしていると考えている。
引用元:参議院ホームページ
印紙税は、日本の基幹税目を補完するものであり、適切に印紙税を収めることは国の税収にとってとても重要な役割を果たすものと言えるでしょう。
人材紹介の契約書に「収入印紙は不要」であると述べました。では、なぜ人材紹介の契約書に収入印紙は不要なのでしょうか。
こちらの記事では前知識として、人材紹介の契約書の内容について詳しく解説しています。契約書の内訳や、それぞれの書類の詳細が分からない方は、併せて参考にしてください。
収入印紙を貼る必要がある文書のうち、人材紹介や人材派遣など人材ビジネスに近しいものは「請負に関する契約書」です。
派遣契約に関する契約書は、印紙税法に基づく課税物件に該当しないため収入印紙の貼付は不要です。
人材紹介業に関する契約書も同様です。
なお、人材紹介業が「請負」に該当しない理由が分からない方は、人材紹介業のサービスについて以下のように考えてみてください。
まず「請負」とは「当事者の一方(請負者)がある仕事の完成を約し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを内容とする契約」(参照:国税庁)を指します。
人材紹介業の契約締結時点では、人材紹介事業者が求人者(企業)に人材を紹介できる保証はありません。求人者(企業)の求める人材が見つからない可能性がある上、人材が選考を途中で辞退するリスクもあります。
つまり、人材紹介業の契約書とは「サービスの提供そのもの」を目的として締結するものです。仕事の「完成」を約束するものではありません。
よって人材紹介業は請負には該当せず、収入印紙の貼付は不要となります。
収入印紙を貼る必要がある文書は、国税庁によって第1号文書から第20号文書まで定められています。
前述の通り、収入印紙を貼付する必要がある文書のうち、人材ビジネスに近いものは「請負」です。しかし、人材派遣も人材紹介も「請負」に該当しないため、収入印紙は不要です。
以下の表は「どのような書類には収入印紙を貼付する必要があるのか」を判断するために、参考にしてください。
文書 | 備考 |
不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは 航空機又は営業の譲渡に関する契約書 | 1万円未満は非課税。無体財産権とは「知的財産権」の総称 |
請負に関する契約書 | 記載された契約金額が1万円未満は非課税 |
約束手形、為替手形 | 手形金額の記載のない手形は非課税 |
合併契約書又は吸収分割契約書若しくは新設分割計画書 | |
定款 | |
継続的取引の基本となる契約書 | 契約期間が3か月以内で、かつ更新の定めのないものは除く |
預金証書、貯金証書 | |
貨物引換証、倉庫証券、船荷証券 | |
保険証券 | |
信用状 | |
信託行為に関する契約書 | |
債務の保証に関する契約書 | |
金銭又は有価証券の寄託に関する契約書 | |
債権譲渡又は債務引受けに関する契約書 | |
配当金領収証、配当金振込通知書 | |
売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書・売上代金以外の金銭又は有価証券の受取書 | |
預金通帳、貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳 | |
消費貸借通帳、請負通帳、有価証券の預り通帳、 金銭の受取通帳などの通帳 | |
判取帳 |
貼付する印紙税額は、取引ごとに異なるため、最新の情報を国税庁ホームページでご確認ください。
今回は人材紹介の契約書に収入印紙は必要か不要か、1つ1つ解説しました。印紙税は国の税制にとってとても重要な役割を果たすものですが、収入印紙が不要な文書にまで印紙税を支払うことはありません。
収入印紙が必要な契約書と、そうでないものを見極め、効率の良い事業運営を心がけてください。
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