人材紹介におけるキャリアアドバイザーの業務委託は違法?職業安定法に触れる可能性が高いため注意
業務委託契約で紹介業を委託し、売上の何割かをコミッションフィーとして支払うという仕組みで、売上を伸ばしている人材紹介会社が少なからず存在します。
人材紹介(有料職業紹介)事業は、国の許認可事業であり、免許を取得していなければ事業運営ができないのは、みなさまもご存知の通りです。しかし、免許を取得している法人の社員であれば、特別な資格等がなくても職業紹介責任者の管理の下で紹介(キャリアコンサルタント)業に従事ができることも事実です。
では免許を持っている会社が、業務委託契約にて紹介業務の斡旋を委託する場合には違法性はないのでしょうか。
結論から言えばもちろん、社員として雇用する場合は法律上問題はありません。しかし業務委託や請負など「外部人材の活用」には注意が必要です。
本記事では、この人材業界の慣習となっている、業務委託問題について考えていきたいと思います。
職業斡旋は「業務委託」で行うと違法
有料職業紹介事業の許認可を取得した企業が、既に職業紹介事業の経験を持つキャリアコンサルタントやリクルーティングアドバイザーと業務委託契約を結び、自社の事業を外部委託するケースはしばしば見受けられます。
しかし、こうした「業務委託による人材紹介事業の運営」は違法に当たります。
なぜなら人材紹介業は許認可取得が必須ですが、業務を委託された外部人材本人は免許を保有している訳ではないためです。
より詳しく見ていきましょう。
職業斡旋(人材紹介)は免許取得が必須
人材紹介業は、国の許認可事業です。
よって開業には免許取得が必要です。免許取得の方法はこちらの記事でまとめています。
免許無しで求人案件の紹介を行い、紹介手数料を受け取る行為等は違法です。
また職業紹介事業には「無料職業紹介」も含まれるため、無償で職業紹介を行ったとしても「反復継続性が認められる」「業として職業紹介を運営している」と見なされた場合は罰せられる可能性があります。
厚生労働省が定める「人材紹介」に該当する事業とは
厚生労働省が定める人材紹介に該当する事業は、以下の2つです。
・無料職業紹介事業
・有料職業紹介事業
より詳しい定義は、こちらの記事で紹介しています。
職業斡旋(人材紹介)で違法と定められている行為とは
今回の記事では、職業斡旋に関する違法行為の中でも「業務委託」に重点を置いて解説します。
しかし、他にも「禁止職種の取扱い」や「児童の紹介」など違法と定められている行為は複数存在します。
違法行為について網羅的に知りたい方は、こちらも参考にしてください。
なぜ業務委託での紹介斡旋が増加しているのか?
まずは、業務委託での紹介斡旋が増加しているのかということについて、委託主と受託者のそれぞれのメリットについて、考えていきたいと思います。
事業者側のメリット
まずは委託主である事業者側のメリットについてです。
1点目は、成功報酬型というビジネスモデルの特性についてです。売上の発生が入社時のみという点から、できるだけ固定費をかけたくないという雇用主側の思考は理解できます。また、優秀な人材を取りたいとはいえ、固定費で莫大な人件費を払い続けることは大きな事業リスクを背負おうことでもあるからです。
2点目は、人材紹介事業がコンサルタントの属人的なスキルにより、大きく売上が左右される点です。面談時のスキルや人柄などの属人的な要素によって、入社決定人数(売上)が大きく変わりますし、1件1件の単価が大きいので売上にかかるインパクトが大きいです。つまり人材紹介事業者は、できるだけ優秀な人材を集めるために、様々な策を講じる必要があります。
その策の1つとして、受託者側(労働者)の制約が少なく、自由に働ける”業務委託’という選択肢をとって、優秀な人材を囲っている会社も多いのです。
受託者のメリット
次に、受託者のメリットです。
自由な働き方ができるという点、金銭的なメリットを享受しやすい点が挙げられます。優秀な人材ほど、人材紹介事業が看板に左右されず、どこでも成果を出せることを理解しています。好きな時間に面談をして、成果を出した分だけ給与をもらえるという点に、惹かれる優秀なコンサルタントは多いようです。
つまり、両者にとって充分なコスト面などのメリットがあり、小規模の人材紹介事業者が増加し続けている状況では、業務委託契約にて、人材リソースを確保する紹介会社が増加していることも頷けます。
業務委託契約でのメンバー集めは、違法なのか?
過去に業務委託契約で紹介業をやっていて、処分がくだされた例(業務停止命令や罰金)はWEB上に実例は確認できませんでしたが、実際に労働局に確認したところ、名義貸しや無免許紹介に該当する可能性が高いとのことでした。
よって基本的に「違法である」ということができます。
関連する法律としては、職業安定法で下記あたりが論点になります。
・名義貸しの禁止
・無免許での紹介業斡旋
正社員、契約社員という雇用契約の場合は、許認可を取得している会社の社員という扱いなので、職業紹介責任者の元にあっせんすることは認められています。
よって、業務委託契約が上記法律における”名義貸し”にあたるのかというポイントが重要になりそうです。
1つ1つより詳しく紹介します。
名義貸しの禁止
職業安定法の32条の10で定められている禁止事項です。
有料職業紹介事業者が、免許を取得していない他者に対して、自社名義で紹介事業を行わせることを禁止しています。
先にも書いた通り、外部人材と業務委託契約を結び、人材紹介業を運営することが「名義貸し」に該当するかはたびたび議論の対象となっています。
ただ個人情報保護の観点から鑑みても、求職者さんの大切な個人情報や企業の内部情報を業務上で知りうる紹介業を、社員じゃないメンバーに委託するということは、安心できる行為とはいえません。
つまり、いくら両者に目先のメリットがあるとはいえ、業務委託にて依頼することは職業安定法に触れ、違法性が高い行為であること、個人情報などの機密情報が外部に漏れるリスクが高い行為なのです。
無免許での紹介業の運営・職業斡旋
名義貸しと関連して、問題になりやすいのは無免許での紹介業の運営・職業斡旋です。
「個別にキャリアコンサルタントらと業務委託契約をして、紹介業を運営する」というケースだけでなく「人材紹介の免許を持つA社が、社内リソース不足を理由にB社に請負で業務を発注する」というケースも「無免許での運営」に合致する可能性があります。
業務委託や請負を活用したい場合は、労働局に事前に見解を確認することもおすすめ
ここまで業務委託や請負を活用することが「名義貸し」や「無免許による事業運営」に合致するリスクがあることを解説してきました。
とはいえ、実際に「業務委託による事業運営で人材紹介会社が摘発された」というケースは事例がほぼ見受けられないのも事実です。
「一切の業務委託がNGなのか」「どこからどこまでは発注してもOKで、どこからがNGなのか」判断に迷う面もあるでしょう。
現実問題として、社内での人的リソースの確保が難しく請負や業務委託によって外部リソースを活用したい場面も多々あるでしょう。特に立ち上げ直後は、外部のコンサルタントなどのリソースを使いたい場面もあるはずです。
そうした場合は、労働局に自社の事情と「どのような目的で外部リソースを活用したいのか」を伝えたうえで「本当に名義貸しや無免許での事業運営に該当するのか」を個別に確認することをおすすめします。
また自社の法務部や弁護士とも、慎重に相談してください。
くれぐれも独断で、業務委託による人材紹介業の運営を行うことは避けてください。
まとめ
結論としては、「名義貸しや無免許紹介に該当する可能性が高く、違法性が高い」といえます。いくら両者にメリットがあるとはいえ、法を犯す行為であるといえます。(※2019年1月9日、処罰事例が確認できないため、違法とまでは言及しておりませんでしたが、考察記事であるとはいえ、誤解を招きかねない表現であったため、最新の情報をもとに「違法」との記載に修正いたしました)
そのほかに紹介事業を運営するに当たって、注意すべき禁止業務について、下記記事にてまとめてますので、合わせて参考にしてみてください。
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