

介護業界は慢性的に人手不足の「売り手業界」の1つ。
採用動向の面から介護事業者にとっては、人材紹介会社を利用するメリットが大きい状況。人材紹介会社にとっても、経験者採用はもちろん、入社までのサポートや入念なキャリアカウンセリング等をセットにしたうえでの「未経験者採用」を提案する価値がある業種の1つであり、今後の成長が期待される市場でもあります。
今回は、介護業界にフォーカスし、採用動向や人材紹介の流れなどを解説します。
公共財団法人介護労働安定センターの調査(※1)によると、介護施設の7割は慢性的な人手不足。人手不足に陥っている介護施設の9割が「採用が困難である」とのこと。
介護業界は少子高齢化が深刻化し、社会問題となる中、人手不足がきわめて深刻です。
人材紹介会社や人材派遣会社にとっては「未経験者や第二新卒、また非労働力人口の人材をいかに介護業界とマッチングさせることができるか」は、大きな問いの1つと言えるでしょう。
平成30年に厚生労働省が公表した「介護労働実態調査の結果」(※2)によると、介護業界の離職率は15.4%。
厚生労働省「平成 29 年上半期雇用動向調査結果の概況」(※3)によると、離職率の平均は8.5%です。
たとえば金融業・保険業の離職率は7.3%。情報通信業は5.8%。
介護業界の離職率は、他の業種よりも2倍~3倍近く高い傾向にあります。
新しく採用をしても離職率が高いため、人が定着せず、業種全体にもネガティブなイメージがついてしまうという悪循環があります。
介護職は高齢者や障害者の身の回りの世話をする仕事のため、イレギュラーな対応が必要となることが多く、残業も増えやすいです。イレギュラーな対応が多い一方で、未経験からの介護職への転身の場合、資格手当などもなく給与が安い水準に留まるケースが多いことも事実です。
また介護の中にも「看取り介護」と呼ばれる、医師が回復する見込みがないと判断した高齢者や障害者の方に特化したサポートもあります。看取り介護を担当する職員は、担当する方の最期が来ることを常に意識せざるを得ません。精神的につらい場面もあるでしょう。
こうしたネガティブなイメージや「身体的・精神的な辛さ」も離職率の高さの原因でしょう。
日本は少子化が進行する一方で、高齢化も進んでおり、国土交通省は「2050年には居住地域の約5割が少子高齢化地域となる」と予測しています(※4)。
人口に対する高齢者の割合は36%まで高まると予想されており、高齢者を支える労働力人口の少なさそのものが介護職の人手不足の原因でもあります。
続いて、介護職の有効求人倍率のデータなどをもとに介護職の採用動向を見ていきます。
介護業界の有効求人倍率は、平均で3.15倍です(※5)。
「コロナ禍で一定数の離職者が介護業界に流れた」「業績悪化に伴う新規求人の減少」など複数の要因から、数値は若干の減少傾向にはあるものの、それでも他業種の3倍近い高水準で推移。
介護業界は「売り手市場」であることに、2021年5月現在でも変わりはありません。
1人の求職者に3~4社の求人がある状況であり、平均年齢は46.9歳とやや高め(※6)。ネガティブな側面が取り上げられやすい職業でもありますが、一方で中高年の労働者の受け皿として貴重な役割を果たしていることもまた事実です。
介護職の主な採用手法は、大きく分けて4つに分かれます。
一般的な「転職サイト」を介した求人です。
各地のハローワークを通じた求人です。ハローワークでは求職者の支援制度として「介護職員初任者研修」の受講の斡旋もしています。
求職者(個人)と求人者(企業)のマッチングを仲介するのが、人材紹介会社です。
「未経験者や第二新卒のマッチングに強みを持つ人材紹介会社」や「ヘッドハンティングに強みを持つ人材紹介会社」など多くの企業が存在し、多種多様な採用ニーズに対応できることが大きな強み。
国内の代表的な人材紹介会社は、以下の記事でまとめています。
人材派遣は、求人企業に対して派遣会社からスタッフを派遣し、労働に従事させるビジネスモデル。人材派遣と人材紹介は、混同されやすい採用手法ですが実際には大きく異なります。
人材派遣と人材紹介の違いは、以下の記事でまとめています。
医療や介護に特化した派遣会社も増加傾向にあります。医療・介護の派遣サービスには「スタッフサービスメディカル」や「きらケア介護派遣」などが挙げられます。
介護事業者が、介護人材紹介会社を利用する最大のメリットは「事業者と求職者のミスマッチのリスクを軽減できること」です。
介護人材紹介会社を介した採用の流れは、介護以外の一般的な人材紹介会社経由の採用と同様です。
RA(リクルーティングアドバイザー)が介護事業者に採用の悩みや、採用要件に関するヒアリングを行った後に求人票を作成。CA(キャリアアドバイザー)と連携し、採用要件を満たす人材の紹介を行います。
求職者が内定するまでの、基本的な流れは以下の通りです。
・求職者が人材紹介会社に登録する
・求職者と人材紹介会社との面談
・CAが求職者に求人案件を紹介
・エントリー及び面接
・内定
介護事業者にとっての大きなメリットは、前述の通り、求職者が事前に「人材紹介会社との面談」を行っていること。
介護職は人手不足が深刻であり、事業者にとっては経験者採用に固執せず「未経験者採用」も検討すべきタイミングです。
とはいえ、未経験者採用を行い「介護職への適性のない人物を採用し、早期退職された」ということが起きると採用コストがかさむうえに、現場の消耗度が強くなります。
よって事業者にとって、明らかに介護職への適性のない人物を事前にフィルタリングすることが重要です。よって求職者と人材紹介会社が面談を行ったうえで、求人紹介が行われることは採用する人材の質の向上に直接的に繋がります。
なお、上記の流れは人材紹介会社の「登録型」と呼ばれるモデルを想定しています。
「サーチ型」について知りたい方はこちらを参考にしてください。
手数料の目安は、求職者の理論年収の30%~35%前後です。たとえば求職者の理論年収が300万円の場合、人材紹介会社の手数料の目安は約100万円です。
ここからは人材紹介会社の担当者向けに、介護業界の「人材ビジネス観点」での将来性などについて解説します。
人材紹介会社の視点で見る「介護業界」の主な特徴は、以下の4つです。
・圧倒的な売り手市場であること
・平均年齢が高いこと
・未経験者採用に乗り出している事業者が比較的多いこと
・早期離職のリスクが高く、返金対応を行う機会が多い可能性があること
介護業界の有効求人倍率は3倍を超えており、平均年齢は40代を超えています。そして介護業は高齢者や障害者の方のサポートを行う仕事のため、力仕事が多い傾向にもあります。
つまり若手社員の採用ニーズが安定的にあることが予測されます。
自社が第二新卒や未経験者のキャリアサポートに強みを持っている場合、介護業界の求人案件を扱うことは検討する価値が大きいでしょう。
一方で、介護業は離職率が飛び抜けて高いことも事実です、人材紹介会社は人材の早期退職への補償として、返金規定を設けることが一般的です。
人材の離職が相次いだ場合、返金対応によって自社のキャッシュフローが圧迫されるリスクがあることには要注意です。
上記の要件を満たすことができる場合、介護業の人材紹介への参入を前向きに考えることをおすすめします。日本の少子高齢化は2050年まで続くことが予見されており、高齢者向けビジネスやヘルスケア、介護などは市場拡大が見込まれるためです。
介護事業者の主な採用要件は以下の通りです。
中途採用の場合、一般的には「3年程度の業界経験」が求められます。しかし介護業界は人手不足が顕著であり、労働力の確保を目的に未経験者の採用に乗り出す事業者が増えています。
また平均年齢が高いこともポイント。
一般的には転職が難しい、30代から40代の業界未経験者でも採用に至る可能性があり、人材紹介会社にとっては求職者に紹介できる案件の幅が広い状態です。
介護職は「人」と接する仕事で、なおかつ身体的な負担も大きいものです。
よって人柄や、仕事に対する意欲の大きさは重要なポイントとして評価されます。
今回は介護職の人材紹介について紹介しました。特に人材紹介会社の担当者で、介護職の求人の取り扱いを検討している方はぜひ参考にしてください。
(※1)令和元年度「介護労働実態調査」の結果
(※2)平成 30 年度 「介護労働実態調査」の結果
(※3)平成29年上半期雇用動向調査結果の概要
(※4)2050年の国土に係る状況変化
(※5)介護人材確保対策
(※6)令和元年度「介護労働実態調査」の結果
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