AIに仕事を奪われる人材エージェントと価値が上昇するエージェントの違い
人材紹介会社の数は2万社を超え、2018年11月の首都圏の新規免許取得事業所数は、なんと140件でした。爆発的に人材エージェントが増加している状況であり、今後も増加の一途を辿るでしょう。このような事業所数の増加だけでなく、テクノロジーの発展や転職者の価値観の変化などにも影響され、人材紹介市場を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。
本記事では、人材紹介事業者全体の変化に関する内容ではなく、人材エージェント個人にフォーカスし、時代の変化や爆発的な事業者の増加の中で、どのように人材エージェント自身の価値が変わっていくのかということを再考すると共に、テクノロジーの発展によって、価値が低下してしまう人材エージェントと価値が上昇するエージェントの違いについて、解説している記事です。
そもそも人材エージェントとは?
人材エージェントとは、求職者(個人)と求人者(企業)の最適なマッチングを実現し、求人者からは主に成果報酬として所定の紹介手数料を受け取るビジネスを指します。「有料職業紹介事業」「人材紹介会社」とも呼ばれます。
求職者(個人)は原則無料で利用できるサービスであり、求人者(企業)にとっては主に成果報酬型で利用できることが特徴です。
なお人材エージェントは「人材派遣」と混同されやすいビジネスです。人材派遣との違いは以下の記事にまとめています。
人材エージェントのビジネスモデル
人材エージェントのビジネスモデルは前述の通り、求人者(企業)からの主に成果報酬型による紹介手数料。紹介手数料の相場は、求職者の理論年収のおよそ30%です。ビジネスモデルの紹介は以下の記事で紹介しています。
代表的な人材エージェント
代表的な人材エージェントには「リクルートエージェント」などがあります。国内の主な人材紹介会社20社は、以下の記事でまとめています。
今までの人材エージェントの価値
これまでの人材エージェントは、求職者や求人の情報を豊富に保有していることが主な価値でした。つまり求職者や求人企業のそれぞれが、自身で適した情報にリーチするのが困難な場合に、豊富な情報量を価値として提供し、最適なマッチングを図っていました。つまり、情報が集まり豊富な情報を持っている大手エージェントの方が価値提供がしやすかったことは事実で、実際にマーケットシェアの大多数を大手人材紹介会社が占めていました。
つまり、会社に求人情報や求職者のデータ、そして過去のマッチング事例というアセットがあればあるほど、安定した価値提供ができたのが今までの人材エージェントという仕事だったのです。また個人エージェント単位でも、経験が豊富でキャリアプランにおける過去の成功転職例を知っていれば知っているほど求職者への価値提供が容易でした。逆に求人企業には過去の成功採用事例を知っていて、その情報をもとに適切な採用要件の定義ができる人材エージェントが評価をされていました。
しかし、インターネットの発展に伴う情報革命により、人材紹介市場にも大きな変化が起きはじめました。
情報価値の相対的低下
もっとも大きな変化は、情報の価値が相対的に低下しているということです。誰もがインターネットで検索すれば、最適な求人情報にたどり着けるようになりました。「indeed」の勃興はその最たる例でもあり、これから日本にも上陸してくるであろう「Googlejobs」も、求職者の仕事探しを大きく変えていくことでしょう。また個人レベルでの転職体験談ブログやSNSでの発信がインターネット上に増加してきたこと、企業が採用広報に力を入れるようになったことが要因となり、求職者が一次情報をダイレクトに取得できるようになってきたのです。
また人材紹介会社にも大きな変化が起こってきています。大手しか持ち得なかった情報を、小規模エージェントでも取得できるようになってきました。大手人材紹介会社が求職者データベースを公開し始めたり、「agent bank」などに代表する求人データベースサービスが内定率などのマッチングデータと共に、求人情報を公開し始めたのです。つまり、大手と小規模エージェントにおいても、持っている情報の差が限りなく減少してきています。その証拠に大手人材紹介の売上シェアは低下の一途を辿っています。
誰にでも大きな差がなく、「情報」が行き渡る世の中になり、情報の価値が相対的に低下しているのです。
人材エージェントの将来性・市場動向
情報の価値の相対的な低下だけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大など大きなトレンドも踏まえたうえでの人材エージェントの将来性についても考えていきます。
市場動向
人材紹介の市場規模は2019年度時点でおよそ3000億円。10年間に渡って市場規模の拡大が続いているマーケットであることが特徴で、2010年度と2019年度を比較すると3倍以上に市場が拡大しています。
中長期的なトレンドとしては少子高齢化に伴う労働力人口の減少に直面することとなり、各社は海外人材のマッチングやRPAの導入などもセットで対応していくこととなるでしょう。
とはいえそうした対応工数を差し引いても、十分に魅力的なマーケットと言えるでしょう。
人材エージェントのビジネスモデルと新型コロナの影響
新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年は多くの人材紹介会社が求人の激減への対応を余儀なくされました。
各社が求人を厳しく絞り込む中でも1つでも多くの求人を確保し続けることと、コロナ禍の中でも求人倍率が低下しない採用ニーズが大きな職種のマッチングに注力すること。またジョブ型雇用やフリーランスの積極活用といったニーズに対応していくことが重要です。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
これからも価値を出し続けられるエージェントとは
情報が限りなくフラットに届く世の中になった中で、エージェントはどのように価値提供をしていけば良いのでしょうか。今ある情報を活用したマッチングは誰にでも平等に機会があります。しかし、今世の中に存在しない情報を引き出して、新しいマッチングを生み出すこと、その価値は今も昔も変わらずに存在しています。むしろその潜在的な情報の価値は相対的に上昇しているとも言えます。つまり、求職者が誰でも情報にアクセスできるようになった世の中だからこそ、求職者、求人企業、それぞれ当事者自身が気づいていない情報を引き出すことの価値は高くなっているのです。
そして、これからは人材エージェントも個人の時代がやってきます。大手人材紹介会社にいる優秀なエージェントがこぞって独立し始めていることは、会社のアセットを使わずとも成果を出せるようになってきている時代を物語っています。求職者がキャリア相談をする相手も、会社のブランドではなく、個人の「信用」で選択する時代がやってきているのです。
だからこそ、今の時代を生き抜くためには、今やっているエージェント業務は既存のデータをマッチングするだけになっていないのか、求職者、求人企業に対して、会社の看板がなくても価値提供ができる状態になっているのかを、問い続ける必要があります。既存の情報を組み合わせるだけでは存在しないマッチングを生み出していれば、今後もAIなどに仕事を奪われることはないでしょう。
まとめ
人材紹介事業自体は今後も拡大し続ける市場であることは間違いありません。今まで求人広告しか使っていなかった大手企業が、人材紹介の利用を開始していることも事実です。
しかし、情報革命により時代が変わりゆく中で、紹介会社で働く個人にフォーカスしてみると、どのように今後仕事をしていくべきかが見えてきます。今ある情報をただただマッチングしているだけでは、この先価値提供が難しくなってしまいます。この変化は決して悲観的なものではなく、求職者と求人企業に本質的な価値を提供し続けていくことができれば、「信用」などを含めた「資産」が蓄積され、より今まで以上に価値を生み出しやすくなっていくでしょう。
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