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市場動向
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人材派遣業界の今後と課題や将来性?人材派遣会社の生き残りや「衰退」について考察

    「業務委託契約で紹介業を委託し、コミッションフィーを支払うことで売上を伸ばす人材紹介会社について解説。人材紹介事業は国の許認可が必要ですが、免許を持つ法人の社員なら資格不要で業務に従事可能です。では、業務委託契約で紹介業務を外部に委託することは合法なのでしょうか?本記事では、この業務委託の課題について考察します。」

    人材派遣業は、今後「衰退が予測される業種」として各種メディアなどで取り上げられることがあります。

    結論から言えば、人材派遣業が「すぐに無くなる」「業界が急速に衰退する」ことは考えづらいでしょう。

    人材業界の市場規模は7兆128億円で、この9割近くが人材派遣業の売上高。2019年度の人材派遣業の市場規模は、6兆6,800億円(前年度比4.7%増)です。人材業界の市場規模は、国内の広告業界に匹敵するものです。

    新型コロナウイルスの感染拡大など様々な要因で、市場規模が縮小に向かうフェーズがあったとしても、景気の回復に伴い市場規模も回復していくと予測されます。

    とは言え、人材派遣業界は「利益率の低さ」など様々な課題を抱えていることも事実です。

    派遣業界の今後の生き残りや「衰退」について、考察していきます。

    派遣業界は衰退している?

    recruitment

    前述の通り、2019年度の人材派遣業の市場規模は、6兆6,800億円(前年度比4.7%増)。2019年度は前年度を上回っており「業界が衰退している」という事実はありません。

    つまり「派遣業の衰退」に関する言説は、あくまで今後の時流に対する「発言者の予想」の域を出ないものであると言えます。

    人材業界のトレンドには着実にキャッチアップし、対策を打つ必要があります。一方で「過剰に業界の先行きを悲観する必要もない」です。

    市場規模は堅調に推移

    人材派遣業の市場規模は、2008年のリーマンショック前にピークとなる7兆7892億円まで拡大。

    その後は金融危機の影響もあり業界全体が落ち込むも、数年かけて規模が回復。2019年度時点では、市場規模は堅調に推移しています。
    人材派遣業の市場規模の推移は、こちらの記事でより詳しくまとめています。

    コロナ禍の影響はこれから現れる

    covid19

    2019年度の市場規模のデータは「新型コロナウイルス感染拡大前」のものであることに、留意が必要です。

    新型コロナウイルス感染拡大の影響で、短期的には各社の業績悪化は避けられず、有効求人倍率の低下や「派遣切り」のリスクなどがある状態です。

    人材業界への新型コロナウイルスの影響は、こちらの記事でまとめています。

    中長期的な課題は「少子高齢化」

    plan

    中長期的には、少子高齢化による労働力人口の減少が課題となります。

    みずほ総合研究所の調査では、40年後には少子高齢化の影響で労働人口が4割減少するとされています。(※1)

    派遣会社は「労働参加率の向上」に向けた求職者獲得ルートの開拓や、そもそも「労働人口が減少したとしても生産性を落とさないための工夫」をする必要が出てくるでしょう。

    「市場規模の大きさ」と「利益率」はイコールではない

    人材派遣業のビジネスモデルは、派遣先企業が支払う月々の賃金のうち、およそ30%を手数料をとして徴収するものです。残りの70%は派遣社員の賃金として、スタッフに渡ります。

    そして、派遣会社は30%の手数料の中から社会保険料や諸経費の支払いを行います。

    派遣会社の営業利益は、派遣社員の給与に対してわずか1.2%程度です。

    つまり、人材派遣業は6兆円以上の規模がある業界ではあるものの、利益率は極めて低い業種です。

    利益率が低く多額の運転資金が必要な業種であるため、事業運営をしていく上では現実的には増資や借り入れなども欠かせないでしょう。

    利益率が低く、増資や借り入れに依存しやすいことは「派遣業が衰退していく」という考え方が支持を得る理由の1つでもあります。

    人材派遣業で「生き残る会社」「消える会社」

    人材派遣業で「生き残る会社」「消える会社」とはどのような会社なのでしょうか。

    結論から言えば、1.2%とも言われる低い利益率を改善できないまま、派遣スタッフ数が減少。在籍スタッフが減少し、派遣先企業の満足度も低下していく企業は「消える」でしょう。

    1つ1つ、生き残るために重要な項目を見ていきましょう。

    HRテック・クラウド活用による業務効率化は必須

    まずHRテックやクラウド活用による業務効率化は必須です。

    HRテックやクラウド活用がより進んでいるのが、人材紹介業です。

    たとえば人材紹介業の許認可申請では、面談を「オンライン専業」とする事業者に対してはオフィス要件を満たしていなくとも免許を交付するケースも増えてきています。

    派遣先企業・派遣スタッフとの面談やスタッフの労務管理などをクラウドに移行。業務効率化を行うことが求められます。

    業務効率化を行うことで、1.2%とも言われる低い利益率を改善。収益性を向上し、事業の多角化に向けた新たな分野への投資をしたり、派遣スタッフの待遇改善を行うことができます。

    テレワーク対応

    HRテックやクラウドの活用は、派遣スタッフのテレワーク対応の観点からも重要度が増しています。

    たとえば事務職の人材派遣を手がけるスタッフサービス社は、2025年までに47都道府県で2万人規模のテレワーク派遣を目指しサービスを本格稼働しています。(※2)

    同社の事務職派遣は、新型コロナウイルス感染拡大時にテレワークに移行。

    収束後は出社形態に戻すことを前提としていたものの、派遣先企業・派遣スタッフ双方からテレワーク継続に対する希望の声が寄せられ、テレワーク派遣の本格化を決めたとのこと。

    テレワーク派遣が本格化した場合、派遣スタッフは派遣先企業の指揮命令下にありながら、自宅で業務を行うこととなります。

    そして、全ての派遣スタッフがテレワークに対応可能なITスキルや「業務に対するモチベーション」を持ち合わせているとも限りません。中にはPCの使い方に困ったり、自宅での作業ではどうしても業務に打ち込めないというスタッフも出てくるでしょう。

    たとえばクラウドによる業務管理や、ビデオ通話ツールを活用した小まめなキャリアカウンセリングなどは重要性を増していくと考えられます。

    派遣先企業・派遣スタッフの双方の信頼を得るには?

    派遣会社にとって、自社が「派遣先企業」「派遣スタッフ」の双方から信頼され、なおかつ派遣先とスタッフが良好な関係を保つことが重要です。

    3者のバランスや信頼関係が崩れると、業務にトラブルが生じるなど様々な問題が発生してきます。

    たとえば「ITエンジニア」など売り手市場で派遣業を展開する場合、自社が派遣スタッフからの信頼を失うと「人材の採用スピード」を「退職スピード」が上回る状態が生まれます。

    在籍スタッフ数が減少すると、派遣先企業からの案件受注ができず、売上高が下降。減少したスタッフの穴を埋めるための採用コストも高騰します。利益率の低さを踏まえると、事業が赤字に転落する可能性もあります。

    派遣先企業、派遣スタッフの双方から厚い信頼を得るためには「派遣先企業の担当者」や「スタッフ」からの連絡を放置せず、小まめにレスポンスを返したり、積極的にサービスを提供する姿勢を見せることが重要です。

    M&Aも進む

    特に中小企業の派遣企業の場合、現実的には大手資本の傘下に入るという選択肢もあるでしょう。

    人材派遣業の許認可申請にかかるコストや手間は小さなものではない上、派遣先企業・派遣スタッフ双方に対する営業コストも大きいです。

    つまり「人材派遣業への参入を検討している大手企業」にとっては、たとえ利益率が小さいとしても「ある程度の運営実績があり」「派遣先企業・派遣スタッフを囲い込んでいる企業」はM&Aの対象として魅力的です。

    独立資本ではなく、大手資本の傘下で事業を継続するという選択肢もより広がっていくでしょう。

    事業の多角化

    派遣会社が安定的に事業を継続するには、事業の多角化も必要です。

    営業利益率の低さを補うために、派遣業のノウハウを活かした新たな事業展開を検討する企業は増えています。

    人材派遣業が10年後も成長するためにできること

    最後に、派遣会社が中長期的に成長し続けるために行うべきこと・できることを1つ1つ見ていきます。

    派遣先企業への付加価値の提供を強化

    人材派遣会社の大きな課題は「利益率」です。

    利益を確保し続けるためには「固定費を削減する」「事業を多角化する」「派遣先企業に対して派遣料アップを行う」のいずれかが選択肢として有力。現実的には派遣料アップを避けられない局面も出てくるでしょう。

    派遣先企業にとって、派遣会社が「派遣料アップをしたとしても取引を継続したい」存在であり続けることができれば価格交渉は比較的スムーズです。

    派遣先企業に対して、他の派遣会社とは異なる「自社だからこそ提供できる付加価値」を与え続ける努力が必要です。

    求職者獲得ルートの開拓

    派遣会社にとってもっとも避けるべき事態は、派遣スタッフの新規採用数を退職者数が上回り続けることです

    特に売り手市場の、能力値が高いスタッフは一社の派遣業務を辞退したとしても「次の案件がすぐに見つかる」のも事実です。

    派遣会社にとっては、能力値の高い派遣スタッフに「長く働いてもらうためのケア」を行うと同時に「同じくらい能力値が高いスタッフを新規で見つける」努力が必要です。

    常に求職者獲得のルートの開拓は重要です。中長期的には国内の労働人口は減少に向かうため、海外人材の開拓を検討するのも良いでしょう。

    人材紹介業への参入の検討

    派遣会社による人材紹介業の立ち上げが増加傾向にあります。

    人材派遣と比較し、人材紹介業は「利益率」に強みを持ちます。

    人材派遣業と人材紹介業のビジネスモデルの違いや、メリット・デメリットはこちらの記事でまとめています。

    派遣会社による人材紹介業立ち上げの増加理由については、こちらでより詳しく解説しています。

    人材シェアリングに注目

    求人者(企業)にとっての人材派遣業の活用メリットが「固定費を削減し、変動費に転換できること」とするならば、新たな業態として「人材シェアリング」も注目すべきです。

    人材シェアリングとは、ハイスペックな人材の知見・スキルを「必要な時間だけ活用する」もの。

    1名のプロフェッショナル人材を、数社でシェアリングすることが特徴。個人のフレキシブルな働き方を実現すると同時に、企業にとっては安価に高度人材の知見を得られることが特徴です。

    企業の採用ニーズは多様化しつつあり「教育コストがかかる経験が浅い派遣スタッフを週5・常駐で使うならば、プロフェッショナル人材を週1かつテレワークでも構わないので活用したい」という需要もあります。

    企業の柔軟な採用ニーズを読み解き、派遣に限らない「人材ソリューション」を提案していくことも重要でしょう。

    まとめ

    派遣業が今後生き残るために心がけるべきことや「そもそも業界は衰退しているのか」を考察しました。

    新型コロナウイルスの影響が色濃く出るのは「これから」ですが、2019年度時点では業界は「衰退している」ということはありません。

    しかし、利益率の低さなど問題も多く、今後は事業の多角化などが必要となるでしょう。

    (※1)みずほ総合研究所「少子高齢化で労働力人口は4割減」
    (※2)スタッフサービス社プレスリリース

    ※当サイトに掲載されている記事や情報に関しては、正確性や確実性、安全性、効果や効能などを保証するものではございません。

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