IT系人材紹介を始めるには?プログラマー・エンジニア人材の集め方や求人開拓のコツ
IT人材に特化した人材紹介の立ち上げを検討している方も多いでしょう。
dodaエージェントサービスの調査によると、2020年11月時点の求人倍率は全職種の平均値で1.79倍。商社・流通は0.77倍、小売・飲食は0.53倍とコロナ禍における経済活動の停滞や外出自粛の影響が大きな分野では「1」を下回っています。(※1)
一方でIT人材への採用ニーズは堅調で、doda調べの有効求人倍率は7.29倍。IT人材は売り手市場であり、人材紹介会社にとっては参入しやすい分野でもあります。
今回はIT分野の人材紹介の立ち上げを検討している方に向け、事業の立ち上げ方や求職者・求人者の集め方を解説します。
IT人材に特化した人材紹介を始めるには?
IT人材に特化した人材紹介を始めるには「人材紹介の立ち上げ方」を知り、なおかつ「IT業界のマーケット分析」と「自社のポジショニング戦略」を練る必要があります。
人材紹介会社の立ち上げ方そのものは、「営業人材に特化したエージェント」「総合型のエージェント」など一般的な人材紹介業の起業と同じです。
人材紹介業の起業の方法は、こちらの記事でまとめています。
人材紹介会社は個人事業主での開業も可能です。
IT業界のマーケットや、人材紹介関連のトレンドをまずは見ていきましょう。
IT人材の定義
中小企業庁では、IT人材を「ITの活用や情報システムの導入を企画、推進、運用する人材」と定義しています。(※2)
広義の「IT人材」には、ディレクターやマーケター、現場の運用担当者も含まれると考えてよいでしょう。
一方、経済産業省が定義する「高度IT人材」はより狭義です。
経済産業省では、めざすべき高度IT人材像を、①基本戦略系、②ソリューション系、 ③ クリエーション系に区分し、必要なスキルを明確化。アルゴリズムやデータベースソフトウェア開発、プロジェクトマネジメントなど求められるスキルとその詳細を一覧にまとめています。
気になる方は、ぜひ経済産業省の資料を参考にしてください。(※3)
総じてIT人材とは、広義にはエンジニアやプログラマーも含む「ITシステムに関わる人全般」。
狭義の高度IT人材は「アルゴリズムやデータベース、プログラミングの専門知識を有した人材」と言えるでしょう。
IT人材の人材紹介が注目されている理由
IT人材の人材紹介が注目されている理由は、大きく分けて3つです。
1つ目は、多くの企業の慢性的なIT人材不足。doda調べのIT人材の有効求人倍率は7.29倍と極めて高く、IT人材にとっては売り手市場。人材紹介会社にとっては、マッチングが成立しやすい状況です。
2つ目は、IT人材の年収水準。人材紹介会社の手数料相場は、マッチングした求職者の理論年収の30%前後。ハイクラス人材のマッチングに成功すると、1件のマッチングが200万円〜300万円の見込み売上に繋がります。IT人材は売り手市場ということもあり、年収も高水準です。
3つ目は、中長期的なトレンド。日本では、2030年に約40~80万人規模のIT人材不足に陥ると推測されています。IT人材の慢性的な人材不足というトレンドが中長期にわたって続く可能性が高いため、人材紹介会社にとっては先行投資などもしやすい状況です。
IT分野の人材紹介立ち上げ・新規参入の課題
IT分野の人材紹介立ち上げの大きな課題は、求職者集めです。
たとえば、転職意欲の高いITエンジニアはエージェント経由ではなく、友人・知人のつながりを元にリファラル採用で次の現場を決めることも多いです。
このことは、売り手市場での転職活動には「転職活動の進め方の選択肢自体が多い」ことを意味します。
新規参入したばかりのエージェントにとっては「どのような施策を打てば自社サービスをエンジニアに使ってもらうことができるのか」が課題。立ち上げ直後は、試行錯誤が続く可能性も高いでしょう。
IT人材の人材紹介は儲かる?
IT人材の人材紹介は儲かるのでしょうか?職種ごとの理論年収を1つ1つ見ていきましょう。
人材紹介のコスト構造や収益性はこちらの記事でも解説しています。
プログラマー・エンジニアの理論年収
エンジニアの平均年収の目安は550万円です(※4)。日本の全職種の平均年収が454.5万円のため、エンジニアの理論年収は全体平均よりも高めと言えるでしょう。
なおIT業界は、大手SIerを頂点とする「下請け構造」が特徴でもあります。自社サービス開発を行うベンチャー・スタートアップは、IT業界全体の売上高から見るとごく一部です。
つまり上流工程を担当するエンジニアと、下請けのコーダーでは平均年収は大きく異なります。
平均年収の値だけを見るのではなく、より詳細に市場分析をする際には「どの工程の、どのような業務を担当しているエンジニアをターゲットとするか」も重要です。
ITコンサルタントの理論年収
ITコンサルタントの平均年収は、651万円です(※5)。
近年、IT業界では大手コンサルティング会社が経営課題の分析からシステム導入までを一気通貫で担当するケースが増えつつあります。そのため、コンサルティング会社で上流の要件定義などを行うコンサルタントの年収は高い傾向にあります。
IT分野の人材紹介の主なビジネスモデル
続いて、IT分野の人材紹介の主なモデルを紹介します。
ハイクラス人材
まずはハイクラス人材に特化したもの。たとえばITコンサルタントや30代以上の管理職経験のあるエンジニア、特定の技術に長けたスペシャリストなどの転職支援を中心に手がけるものです。
ハイクラス人材の理論年収は、ITコンサルタントの年収として紹介した651万円以上が目安。年収1000万円以上のプレイヤーも多く存在します。
ハイクラス人材に特化したエージェントは、マッチング成立ごとの見込み売上の額の大きさが強み。
一方で、案件稼働から成立までのリードタイムが長くなりやすいことに注意が必要です。ハイクラス人材側が「現職でもそれなりに満足している」ケースが多いと同時に、企業側も採用には慎重な姿勢を見せることが多いからです。
未経験者
続いて、未経験者です。主な対象は年収300万円〜400万円の層です。
特にベンチャーやスタートアップは「学習意欲があれば、入社時点ではコーディング経験不問」という求人案件を用意していることも少なくありません。
このような未経験者歓迎の求人案件を用意している企業に対し、実務経験はないものの学習意欲が高い若者をマッチングさせるのが主なモデルです。
研修との一体型
最後に「研修との一体型」です。
代表的な例は、プログラミングスクールが卒業生を未経験者歓迎の企業とマッチングさせるものです。
企業サイドからすれば「未経験者歓迎」と謳っていたとしても、コーディング経験がゼロの人材に対して一から教育を施すのはコストがかさみます。
実務自体は未経験だとしても、スクールや研修などで学習経験がある若者であれば「安心して採用できる」というケースも多いです。
IT分野の求職者の集め方
ここからは求職者集客と求人開拓について、それぞれ解説します。
まずはIT分野の求職者集客について。
主な手法は、他分野でもよく使われる「スカウトメール」「求人サイト掲載」「LP作成」などとなります。一般的な求職者集客手法は、こちらの記事で解説しています。
ただしIT人材は売り手市場であり、求職者集めは難航する可能性も低くはありません。
そうした場合には「ドーナツ理論」を意識し、エンジニアやプログラマーにとって「魅力的」かつ「応募しやすい」フロントエンド商材を獲得した上で、広告出稿などを検討すると良いでしょう。
ドーナツ理論とは、中心となる商品をまず1つ用意した上で、その周囲を囲むように魅力が少しずつ異なる商品をずらりと用意。ターゲットとなるユーザーを囲い込むものです。
詳しくはこちらで解説しています。
たとえば「上場企業の高年収案件」「リモートワークが可能な案件」「月単価100万円以上のフリーランス案件」など、エンジニアやプログラマーを惹きつける案件を複数用意。その案件に近しい、他案件も用意するといったことが考えられます。
このようにスカウトメールや求人サイト掲載といった基本的なことはおさえつつも、フロントエンド商材の充実も同時に行うことが重要です。
こちらの記事では、facebookやLinkedInなどSNSを活用してエンジニア集客を実現している人材紹介会社の事例を紹介しています。
IT分野の求人開拓の方法
IT人材は基本的に売り手市場です。そのため実績のある人材を囲い込むことができれば、求人案件そのものを確保することは難しくはないでしょう。
よって、ポイントとなるのは「フロントエンド商材をどのように確保するか」と「限られたリソースの中で、多くの求人をいかに用意するか」です。
1つの考え方としては、求人数の確保は求人データベースを活用することで担保。求職者はスカウトメールとLPによって確保。自社のリソースはフロントエンド商材の確保に集中するといったものが考えられるでしょう。
法人営業不要で、立ち上げ直後から求人数を確保できる「求人データベース」についてはこちらの記事で解説しています。
より全般的な「小規模人材紹介会社が大手人材紹介会社と渡り合う方法」はこちらの記事で解説しています。
まとめ
IT系人材に特化した人材紹介会社の立ち上げノウハウやマーケット分析をお届けしました。特化型人材紹介会社立ち上げの参考にしてください。
(※1)doda 転職求人倍率レポート(2020年11月)
(※2)中小企業庁
(※3)経済産業省
(※4)平均年収.jp
(※5)求人ボックス
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