人材紹介業は個人事業主でも独立・開業が可能!要件・注意点・メリット・デメリット
人材紹介業は維持費が少額で、開業時の事務所要件などいくつかの条件を満たせば比較的開業がしやすい業種です。
ただし、独立・開業にあたっては「法人格を取得するべきか」「個人事業主でも開業できるのか」など免許取得時に知っておくべきポイントもあります。
独立・開業に必要な要件や「法人格を取得すべきか、個人事業主でも良いのか」を1つ1つ解説していきます。
人材紹介・有料職業紹介で独立!免許取得時に知っておきたいこと
人材紹介業とは、正式には「有料職業紹介」を指す言葉です。
有料職業紹介とは厚生労働大臣の認可を受けた事業者が、求人者(企業)と求職者(個人)をマッチングするもの。
求職者(個人)の採用が正式に決定した場合に、求人者(企業)から紹介手数料を受け取るのが基本的なビジネスモデルです。
人材紹介業の開業には、各都道府県の労働局の窓口で申請が必要です。免許の交付には審査が必要で、基準となる要件があります。
要件を満たすには、初期投資がかかるケースもあります。免許取得時に求められる要件や費用、将来的なリスクを見積もっておきましょう。
こちらの記事では人材紹介会社の起業の手順や、準備に必要なことをまとめています。ぜひ参考にしてください。
人材紹介・有料職業紹介で独立するメリットは何?
メリットは設備投資など、開業にあたって必要な先行投資が少ないことです。
平成29年(2017年)までは、有料職業紹介の免許取得時には「事務所要件」が厳しく定められていました。
具体的には「20㎡以上の面積を有していること」「求人者、求職者の個人的秘密を保持し得る構造であること」「事務所の所有又は賃貸の名義人と事務所の有料職業紹介事業者が同一であること」といったもの。
全ての要件を満たし、なおかつ求職者にとってアクセスが良いエリアのオフィスは「賃料が高い」「全面的な改装が必要」というケースが多く、開業の大きなネックになっていました。
しかし平成29年(2017年)に大きく事務所要件が緩和され、2020年現在ではレンタルオフィスやシェアオフィスでの開業が可能です。
ローコストでの開業ができ、不良在庫を抱えるリスクもない事業のため「ランニングコストが小さく、利益率が高い」業態と言えます。
事務所要件緩和前と比較して、大きく設備投資やランニングコストを抑えた形で事業を運営することができます。
人材紹介・有料職業紹介で独立するデメリットは何?
デメリットは、求職者と求人者をマッチングして「成約する」ことの難易度が高い点です。
- 求人数が集まらない
- 転職希望者が集まらない
- 転職希望者が履歴書・職務経歴書を書いても書類選考に通らない
- 面接に通過しない
- 求職者・求人者の双方が希望条件を途中で変更する
など、一名の転職を実現するには様々なハードルがあります。
新規参入時には「企業サイドの採用ニーズが大きい市場はどこか」「転職希望者をどのように集めるか」「成約率を高めるための工夫をどのように行うか」など、精度の高い市場リサーチと戦略策定が必要です。
人材紹介・有料職業紹介は個人事業主でも開業できる?
人材紹介・有料職業紹介で独立するとき、気になることの1つは「法人格を取得して開業すべきか、個人事業主として開業すべきか」ではないでしょうか。
結論から言えば、人材紹介業は個人事業主でも開業可能です。
ただし、個人事業主で開業する際は2つの注意点があります。
1つ目は資産要件。
開業には一定の資産をあらかじめ用意しておく必要があり、具体的な金額が定められています。資産要件は個人・法人を問わずに要求されるものですが、後半で解説するように「個人で要件を満たすことは、法人よりも難しい」のが特徴です。
もう1つは、個人事業主で取得した免許を法人に移管することはできない点です。
個人事業主として開業して事業が拡大し、法人成りした場合でも免許は引き継がれません。よって法人成りする際には、免許は取り直しとなります。
個人事業主で開業する際に気をつけるべき「資産要件」
個人事業主で開業する際、最大の注意点となる「資産要件」を詳しく見ていきましょう。
有料職業紹介の開業に必要な資産要件
開業に必要な資産要件は、下記の通りです。
- 資産の総額(繰延資産及び営業権を除く)から負債総額を控除した額が500万円以上(×事業所数)であること。
- 自己名義の現金・預貯金の額が150万円以上であること。(事業所の追加につき+60万円)
1つ目の「資産の総額(繰延資産及び営業権を除く)から負債総額を控除した額が500万円以上(×事業所数)であること」とは、基準資産額が一事業所につき500万円以上あることを意味します。
たとえば関東と関西に1つずつ事業所を設ける場合は、基準資産額は1000万円以上必要です。
2つ目の「自己名義の現金・預貯金の額が150万円以上であること」は、現金預金額に関する要件で、事業所の追加につき60万円が追加で必要です。
特に注意すべきは、1つ目の基準資産に関する項目です。基準資産は「銀行口座に入っている額」ではなく、直近の決算の賃借対照表をベースに評価されます。銀行口座に入っている額が500万円だとしても、会社の負債額によっては免許は取得できません。
なぜ個人事業主では資産要件のクリアが難しいのか
個人事業主では資産要件を満たすのが難しい理由は、個人事業主には「個人の資産」と「法人の資産」の切り分けがないためです。
たとえば個人事業主が住宅ローンや自動車ローンを既に組んでいる場合、ローンの金額はマイナス資産として評価されます。
資産の総額から住宅ローンや自動車ローンの金額を差し引いた上で、500万円以上の資産がある人は決して多くはないでしょう。
法人で開業する場合は、法人の資産と個人の資産は別物として評価されます。よって既にローンを組み、個人としてはマイナス資産がある場合でも、法人としての評価には影響がありません。
人材紹介・有料職業紹介で独立する際は法人化すべき?
ここまで人材紹介業で独立する際のメリットや、注意すべき資産要件などを見てきました。
人材紹介・有料職業紹介で独立する際は法人化すべきなのでしょうか?
【結論】法人化した上での立ち上げがおすすめ
結論から言えば、法人化した上での立ち上げがおすすめです。
個人で人材紹介業の資産要件をクリアすることはハードルが高く、なおかつ法人成りした場合に免許を法人に引き継ぐことができません。
個人としてローンや借り入れを直近で行う予定がない方でも、いつ不測の事態があり、ローンが必要になるかは分からないものです。
そして個人のマイナス資産が独立のリスクになるのであれば、法人と個人で資産を切り分けるべきです。
人材紹介業での独立を考えている方は、特段の理由がない限りは法人化した上での立ち上げがおすすめです。
資産要件をクリア&法人化の予定もないなら個人でもOK
銀行口座に十分な預貯金があり、なおかつ「既にローンを完済している」など借り入れやローンの予定がなく、法人化も検討していない方は個人事業主としての開業も視野に入ります。
本業が別にあった上で「本業のつながりを生かした人材紹介業を副業として始めたい。あくまで副業であり、法人化は考えていない」というケースに適しています。
人材紹介・有料職業紹介を開業するために必要な要件まとめ
最後に人材紹介・有料職業紹介を開業するために必要な要件をまとめてご紹介します。
個人情報を適切に管理していること
求人者、求職者の個人情報を厳重に保持することが求められます。たとえば個人情報管理の一環として求められるのは、適切なオフィスの構造です。
オフィスには個室を設置した上で、面談を予約制にして求職者が他の第三者と同席しないような構造が必要です。
財産的基礎を有していること
記事の前半で解説した通り、基準資産額が500万円以上あることなどが求められます。
決算で財産的基礎の要件を満たせない場合は、「次の決算まで待つ」「増資をして、条件をクリアする」などの対応が必要となります。
代表者及び役員、職業紹介責任者が欠格事由に該当しないこと
代表者及び役員、職業紹介責任者には労働法令などに関する一般的な知識が求められます。
また職業紹介責任者は、以下の条件を満たす必要があります。
- 成年に達した後3年以上の職業経験を有する者であること。
- 厚生労働省指定団体が主催する「職業紹介責任者講習会」を受講した者であること。
厚生労働省指定団体が主催する「職業紹介責任者講習会」については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
事業所が事業をおこなうのに適切な場所であること
有料職業紹介のオフィス要件としては、下記の条件が求められます。
平成29年(2017年)に職業安定法が改正されたことでオフィス要件は大きく緩和され、以下の3点を満たしていればレンタルオフィスや住居用マンション、SOHOなどでも開業が可能です。
1.職業紹介の適正な実施に必要な構造・設備(個室の設置、パーティション等での区分)を有すること。
2.他の求職者又は求人者と同室にならずに対面の職業紹介を行うことができるような措置(予約制、貸部屋の確保等)を講ずること。
3.面談スペースと執務スペースもそれぞれ個人情報が守れる構造になっていること
まとめ
人材紹介業の開業に当たって「法人として開業すべきか、個人で開業すべきか」を中心に、必要な要件や注意点を解説しました。
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